あと半年で閉鎖、「築地市場」に行くべき理由 「人より魚がエライまち」の懐は実に広かった

築地市場の魅力に取りつかれた2人に話を聞く(写真 :Kaylee / PIXTA)
東京都中央卸売市場築地本場(築地市場)が今年11月、81年の歴史に幕を閉じる。その魅力にとりつかれ『築地の記憶 人より魚がエライまち』を刊行した写真家さいとうさだちか氏、歴史ライター冨岡一成氏の2人に、失われゆくものへのオマージュを語ってもらった。
面白い所だなと思い、近所に越した
──最初に出てくる雪景色の写真が、静寂に包まれる築地市場という別の顔を見せてくれますね。
さいとう さだちか(以下、さいとう):築地によく買い物に来る友達について仲卸の店を見て回ってるうちに、毎朝祭りの夜店をやってるようなもんだ、面白い所だなあと思って撮り始めたことが始まりです。それが4年前。翌年には勝どきに越してきた。遠くから通うのが面倒になったのと、雪の日が撮れないのが惜しくて。車で駆けつけても路面の雪はほとんど解けてしまってる。2014年2月に雪の築地市場の写真が撮れたとき、越してきてよかった、これで元が取れたと思いました。
冨岡 一成(以下、冨岡):さいとうさんの写真を初めて見たときに、人の顔がいちばんすてきだと思いました。やっぱ市場は人間がせめぎ合う場なんで。
さいとう:本の表紙にしたぬれた石畳と買出人の後ろ姿のような象徴的な写真を撮り終わって、次は何だと思ったら、人の顔だった。話してるとみんな面白い。最初は「オマエとなんか話すか」という態度なんです。それがいつの間にか向こうからしゃべりかけてくる。話しだすと止まらなくて、撮りたいのを撮れなかったなんてしょっちゅうでした。
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