水産物の「地産地消制度」、消費者の利点は? 米国で広がる加工・卸業者通さない流通手法
ほとんどの消費者は現在、地域支援型農業(CSA)について聞いたことがある。生育開始時に農場の一株を購入する見返りとして、1週間分の生鮮食品を割り当てられる仕組みだ。米国では1980年代から広がった。農家が収穫に対して公平な賃金を得られるとともに、資金支援を行った消費者は新鮮で、大抵は有機栽培された野菜や果物を受け取る権利を保証される。
一方で、地域支援型漁業(CSF)は歴史が浅いこともあり、あまり知られていない。2007年にメイン州で始まり、2015年9月現在は北米39ヶ所で行われている。CSAを水産物に適用したもので、CSFの加入者は漁場の一株を購入。この支払金は通常、加工業者や卸業者などを介さずに直接、地元の漁師に回され、彼らの収入安定に寄与する。
漁師は見返りとして、水揚げしたばかりの水産物を毎週ないしは隔週で提供する。その水産物がいつ、どこで、誰が、どうやって捕ったかも知らされるため、消費者を安心させることができる。
CSFの導入を進め、旗振り役を果たしてきた北西大西洋海洋連合のニアズ・ドーリー理事は「小規模な漁場で捕れる水産物が多様である点は、漁業コミュニティにとって頼みの綱だ」と語る。
漁師の収入安定につながり、環境とも共生
ドーリー氏によると、ニューイングランドの漁師は約60種類の魚や貝類を捕獲するが、そのうちスーパーマーケットに回されるのはせいぜい、昔からの納入実績がある12種類に過ぎず、残りは処分されてきた。
しかし、CSFによって漁師は、人気が高いものの買い叩かれてしまう水産物にこだわることなく、捕獲したすべての魚を販売可能だ。ミドリガニやコイなど、他の地域から侵入してきた生物も対象となる。漁師たちは、環境に逆らうのではなく共生して、乱獲で減った魚が再び増えるようにすることができる。