1月18日のコラムでは、新日本プロレスの経営改革について、プロレスの歴史などと絡めながら、分析を行った。その続編として、4日連続して、木谷高明・新日本プロレス会長への直撃インタビューをお届けする。
最強から最高に
キム:今回は、今後、新日本プロレスをどう打ち出していかれるのかについてお伺いさせてください。今までのような、あいまいな定義でやっていくのでしょうか、それとも、どこかの段階で明確にプロレスの定義を打ち出すのでしょうか。ちょっとコアな話になってきましたけど、いかがでしょう
木谷:僕はしばらくはあいまいなままでいいと思うんです。そう言ってくれるファンの人もいます。かつては総合格闘技もなかったので、プロレスの中でみんな最強を求めていたんですよ。その時代は90年代で終わったかな、と思います。
総合格闘技のPRIDEが台頭してUFC(米ズッファLLCが運営する総合格闘技の大会)がこれだけ伸びて、「最強」から「最高」を求める時代に変化してきたわけです。
その「最高」の部分は何かと言えば、僕はアートだと思う。
実は、去年ずっと新日本プロレスに対して、「物足りない、物足りない」と言い続けていたんですが、それはアートの部分が少なかったからです。基本的にプロレスはワークなんですが、1割か2割はアートであってほしいんですね。
アートとワークと何が違うかというと、生き様が出ているかどうかです。アートを見たときは、こちらも感動するわけですよ。
キム:最近はどの選手や試合にアートを感じられましたか?
木谷:1つは、昨年大活躍したオカダ選手のドロップキックですね。あれはもうアートですね。技としてアートなんですよ。
そして、生き様としてアートを感じたのは、昨年6月16日の大阪府立体育館で、タイトルを取った棚橋選手が超満員の会場を見て、涙を流しながら「この光景が見たかったんです」と言ったときですね。
7年間、観客が入らないときも辛抱して頑張ってきた、どん底から頑張ってきたという、その生き様とその言葉にやっぱりアートを感じるわけですよ。だからみんな感動して、一緒にもらい泣きした人もいる。そういう部分がまだ少ないんですよね。
キム:なるほど。プロレスは何を売っているのかという、本質的なポイントにつながる話ですね。
今回、会場に行かせていただいて、周りの記者の方にも突撃取材しました。たまたま隣にいた女性の記者の方が、非常にきれいだったんですね。ブシロードの取材をしている方だったんですが、「プロレスの魅力って何ですか」と聞いてみたところ、しばらく考えた後に、「やっぱり生き様ですかね」と答えてくれました。ひたむきにプロレスに向き合う姿勢や、挫折から努力してはい上がる様など、プロレスに生き様としてのアートを求めている人も多いんですね。
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