たった1人の日本人という”重責”
「『550人中、たった1人の日本人学生として、僕には何が出来るだろう』。それを自問自答する毎日でした」
川本さんは、2011年9月に入学して以来、日本代表であることに重荷を感じていた。なぜなら、550人の同級生にとって、川本さんは、「日本」の象徴なのだ。
「どうして、日本人は1人しかいないの?」
「日本人はMBAに興味がないの?」
そう聞かれ、反論したり、理由を説明したりするのが苦しかったという。
「同じアジアでも、中国人や韓国人は20人も、30人もいるわけです。大きなグループを形成していて、存在感は増すばかり。僕にできることは、『日本人留学生も捨てたもんじゃないな』と思ってもらえるような発言をしたり、貢献をしたりすることだけでした」
川本さんは、コロンビアの学園祭で、日本をアピールするために、サムライ劇でもやろうかと本気で考えたこともあったという。
「でも、思いとどまりました。イロモノで本当の日本の姿や、日本人の姿を伝えられるか、と思ったのです。それよりは、僕を通じて、日本人の気遣いとか、心の優しさとか、そういったものを感じてもらえるように努力したんです」
そんな川本さんを心から支えてくれたのが、同級生のマルコス・シーランさん(29)だ。経営コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニー出身のアイルランド系スペイン人。日本に興味を持っていて、川本さんがリーダーを務めるJapan Business Association(日本ビジネス研究会)のメンバーとなったのがきっかけで、親しくなった。
通常、Japan Business Associationは、日本人留学生を中心に運営されるが、日本人が実質、川本さん1人となり、存亡の危機を迎えていた。そんなとき、マルコスさんやその友人、9名が運営幹部役を買って出てくれたのだ。
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