2005年には、「IBM = International Business Machines」の社名の由来ともなったBusiness Machines事業= PC事業を、中国のレノボ社に売却したことは、記憶に新しい。
「大教室で講演が始まってすぐ、ただならぬカリスマ性を感じました。原稿もメモもまったく用意せず、手ぶらでやってきて、1時間あまり、学生の目を見ながら講演を続けました。60代とは思えない、圧倒的なエネルギーレベルの高さでした」
川本さんが、数ある講演の中で、パルミサーノ氏の講演に特に影響を受けたのは、大企業を内部から変革した人物だからだ。パルミサーノ氏の言葉が今も鮮明に心に残る。
「創業100年の歴史を持つIBMは、なぜ、今なお成長し続けられるのか。多くの偉大な企業が誕生してきたが、その大半は存続できず、姿を消してしまう。
これらの企業の敗因は、創業時の『第1幕』にとどまり、『第2幕』へと舞台を転換できなかったからだ。企業が絶えず成長するためには、『企業のコアバリュー』以外のすべてを、つねに変革させなくてはならない」
IBMといえば、1980~1990年代初頭、いわゆる大企業病にかかっていたことで知られる。社員は、社内政治、社内闘争に明け暮れ、自分たちの論理で仕事を進め、顧客の意見は無視。その結果、92年度は50億ドルもの赤字を計上し、経営危機に直面していた。
この瀕死の巨象を立て直したのが、ルイス・ガースナー氏であり、サミュエル・パルミサーノ氏だ。
川本さんにとって、パルミサーノ氏の語る「第2創業」は、成熟期を迎えている日本企業に変革をもたらすヒントに思えた。社費留学生として、卒業後、博報堂という大企業に新しいビジネスや変革をもたらす人材として、期待されているからだ。
「日本の広告業界全体が成熟産業となりつつある中、今までのビジネスモデルでは成長していけないことは、誰もがわかっています。IBMのような世界的な大企業でも、第2の創業をすることができた。
ビジョンさえぶれなければ、リーダーシップ次第で、会社を変革させることができるのだと、実感しました。日本企業を変えるには、一歩踏み出す勇気が必要なのだと、改めて思いました。」
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