当然、この考え方には批判も多く、アンガーマネジメントも攻撃性を伴う怒りについては問題視しています。しかし、DVをする人の考え方と上記の社会構築理論による分析には、一致する部分がありそうです。
DVの加害者には「劣等感」を強く持っている人が少なくありません。そして、人は劣等感を持っていると、幸せを感じることが難しくなります。だから、自分の劣等感を晴らすために、「パートナーの欠点を指摘する」「パートナーに見栄をはる」「パートナーへ暴力をふるう」といった問題行動に走る人が出てくるのです。
これらのDV行為に共通するのは「自分はパートナーより上の立場であることをわからせたい」という感情です。たとえば、夫と妻の収入差がDVの発生理由になるのも、自分の収入が高いことに夫が優越感を見出し、生活力のパワーをもって妻を服従させるからだと言えます。
妻が起こす、大掛かりな「報復行動」
では、ここで言う収入差のような、妻を「服従させられる理由≒抑圧するに足るパワー」がなくなったら、どうでしょう? そこに待っているのは、もしかすると、妻からの「報復行為」かもしれません。
怒りには「情動伝染」という性質があります。つまり、怒りは新たな怒りを生むのです。「熟年離婚」などは、情動伝染による報復行為の典型例と言っていいでしょう。熟年離婚は、夫が定年退職を迎える日に告げられるケースが多いそうです。夫にとっては晴天の霹靂、妻にとっては臥薪嘗胆……といったところでしょうか。
真相はわかりませんが、アンバー・ハード氏にも、ジョニー・デップ氏に対するなんらかの怒りがあり、ロサンゼルス市警察などを巻き込んで事態を表面化させ、大掛かりな報復行動に至ったのかもしれません。
6月7日放送のNHK『クローズアップ現代』のテーマは、「妻が夫にキレるわけ 2800人が語る現代夫婦考」というものでした。この番組が2800人を対象に行った独自調査によると、妻の夫に対するイライラの原因第1位は「私(妻)の気持ちを理解していないこと」だったのです。
また同番組では、30年前と今の、夫からの離婚動機の変化についても触れています。1985年には第8位だった「妻からの精神的虐待」が、最新の調査で第2位に急浮上しました。
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