デキない人は「住む場所」へのこだわりがない それは収入や仕事の結果とも直結する
住む場所にコストをかける理由
速水 健朗(以下、速水):なんだこれ。ただの変態による個人的な趣味嗜好のハナシかよ……そう思ったんですよ。
中川 淳一郎(以下、中川):えっ?
速水:中川さんの『節約する人に貧しい人はいない。』を読んで、最初はそう感じたんです。だって、可処分所得は高いのに「服にまったく頓着しない」「時計や靴にカネをかけるのはバカ」「東京で暮らすならクルマを持つなんて無意味」といった調子で、いかにおカネをかけないで暮らすかを説いている。“家賃は収入の30%が目安”みたいな言説に踊らされるな、とかね。カネを持っても金銭感覚や暮らしぶりは貧しかったころのまま一定に保って、節約を旨とすべし。そのほうが何事もラクチンだよ、と。
中川:そうですね。
速水:一読したとき、「そんな超人思想、なかなか真似できないよなぁ」と思った。ただ、読み終えて反すうしてみると、次第にジワジワきて。で、読み返してみて確信しました。中川さんの『節約する人~』は、“節約”の本じゃないですよね。むしろ、どこに住むのかについてはすごくコストを払っている。中川さんはおカネがない時期でも、一貫して渋谷エリアに留まり続けているわけで。
中川:ええ、確かに。社会人になったころから渋谷界隈で暮らしてきたから、単純に馴染んでいるというのもありますけどね。ただ、速水さんが指摘するとおり、もう何年もオレの主要な取引先のひとつとなっているサイバーエージェントが渋谷にあって、会議や打ち合わせなどに急に呼び出されても「はいは~い、いま出ますから~」なんて調子で、すぐに出向くことができる。そういうのって大事だなと。とりわけフリーランスは、使い勝手のよさを取引先に感じてもらえるかどうかが勝負なところもあるし。