それでは、この課金モデルへの移行で、NYT社の経営がどうなったのか? 具体的に見ていくことにしよう。
NYT社は、課金モデルへの移行以外にも、傘下の16の地方紙とその関連事業を売却し、中国語のニュースサイトを開設するなど、収益の改善に必死に取り組んだ。そうして、デジタル版の有料購読者を確実に増やしていった。
しかし、一度陥ってしまった赤字体質は一向に改善されなかった。
12年4月~6月の第2四半期決算でも、広告収入の落ち込みが響き、8814万ドルの最終赤字を計上している。さらに、12年第3四半期決算では、営業利益が60%も減っている。課金モデルによって販売売上高は7.4%増加したしたものの、広告売上高が8.9%と大きく落ち込んだため、減収減益となってしまったのだ。
起死回生策は、英国からの新CEO招聘
NYT社は、1世紀以上にわたってザルツバーガー家がオーナーを務めてきた。現在のザルツバーガー会長が、業を煮やして、赤字打開のために打った手は、なんと新しいCEOを英国から招くことだった。12年8月、NYT社の新しいCEOに指名されたのは、英公共放送BBCのマーク・トンプソン元会長だった。
ザルツバーガー会長は、トンプソン氏の任命を発表した席で、「わが社は活字媒体と広告市場を熟知しており、業界のなかでもベストな人材も抱えている。しかし、われわれの将来はビデオ、ソーシャルメディア、モバイルメディアに向かっている」と説明している。
トンプソン氏は、8年間にわたりBBCを率いてきたが、その間、タブレット型携帯端末向け番組配信(BBC iPlayer)などデジタル事業の推進で実績を残してきた。また、アメリカで立ち上げたBBCアメリカも成功させた。その一方で、不要人員のリストラにも手を染めてきた。
それを見たザルツバーガー会長が、NYT紙の未来を託すために、トンプソン氏を指名したのだ。つまり、この時点で、もはやNYT紙は、紙を捨てる方向に舵を切ったと言える。よって、デジタル化推進に伴うリストラは、今回で終わらず、これからも続くだろう。
※続きは2013年1月9日(水)に掲載します
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