実際、NYT紙では、労使の対立がかれこれ1年半も続いており、その間、組合員は協定なしで働いていた。労使対立の原因は大きく2つあり、1つは年金計画の凍結と健康保険加入問題。そしてもう1つが、プリント版とデジタル版の従業員の雇用契約を別々に結ぼうとしたことにある。
この労使対立は12年秋になると深刻化し、本社前で記者たちの抗議デモまで行われた。このデモの様子は、YouTubeにもアップされているので、見た人もいるかもしれない。
そして今回、とうとう3回目のリストラの発表となったのである。
NYTと朝日新聞のリストラは大違い
日本の新聞でも、リーマンショックによる不況時にはリストラが行われた。たとえば、朝日新聞は09年3月期(連結)に設立以来初の最終赤字に転落すると、「転進支援制度」(事実上の早期退職制度、リストラ)を実施した。
このリストラは業界で評判になった。それは、リストラとはいえないほど待遇がよかったからだ。
朝日新聞では、早期退職に応じると、その時点で給料が1000万円に満たない場合は1000万円、1800万円を超える場合は1800 万円として計上し、その半額を60歳まで年金として毎年受け取ることができた。つまり、退職後も最低でも毎年500万円が保証されたのである。これは、一般企業のリストラと比べたら、天国のような厚遇だった。
しかし、アメリカのリストラは違う。現地の報道によると、今回のNYT紙のリストラの内容は、退職一時金として、勤続6年未満の場合は15週分の給料相当額、6年以上11年未満の場合は30週分の給料相当額、11年以上の場合は1年につき3週間分の給料(アメリカの給料は週給が一般的)相当分を払うというものだ。ただし、上限は2年分。これに医療保険が、11年未満で4カ月、11年以上で8カ月つく。
この計算式に基づくと、勤続10年なら30週間分、勤続20年なら60週間分の退職金が支払われるので、NYT紙記者の給料を週給1500ドル(約12万円)とすると、勤続20年で9万ドル(720万円)ということになる。
朝日新聞では年俸1000万円以上の社員がほとんどだが、アメリカの新聞には、こんな高額年俸の記者はいない。ほんの一部の優秀な記者を例外として、現場記者の給料は安い。NYT紙は名門だからまだましだが、地方紙となると、週給で1000ドルに満たないところがほとんどだ。
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