朝日新聞「有料電子版」のジレンマ 日経新聞に対抗

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日経新聞に対抗、朝日新聞も「有料電子版」スタート

3月末までのスタートを目指し、朝日新聞社が有料の電子版を準備していることが、明らかになった。

1月4日、秋山耿太郎社長は社員向けの新年あいさつの中で、「アイパッドなど多様な端末に配信する仕組みにする」「紙との併読の場合には割安にする」など、新しい電子版の基本コンセプトを説明。全国紙では、日本経済新聞社が昨年春に有料電子版を開始しており、朝日は2紙目の参入ということになる。

朝日のビジネスモデルは先行する日経と似ている。日経の料金プランは二つあり、一つは紙の新聞を購読している読者が月に1000円を追加で支払うと、電子版を併読できるプラン(朝夕刊セット地区では計5383円)。もう一つが月4000円で電子版のみを購読できるプランだ。

朝日も同様に2種類の料金プランを設ける。価格は、日経とほぼ同じ水準になるもようだ。「基本は紙の読者へのプラスアルファのサービス。紙との併読を基本に設計している」(朝日新聞コンテンツ事業センター幹部)。

しかし、問題はどれだけ有料会員を獲得できるか、だ。日経電子版は順調に有料会員を増やし、昨年12月上旬には10万を突破。世界的に見ても有料モデルを成功させたのは、米ウォールストリート・ジャーナル紙や英フィナンシャル・タイムズ紙など、経済専門紙ばかりだ。

これに対して、朝日の前出幹部は、「携帯電話向けの有料情報サービス『EZニュースEX』は昨年9月に100万会員を突破している。一般紙でも有料モデルは十分に成立する」と自信を見せるが、果たしてどうか。

朝日にはジレンマがある。電子版のコンテンツを充実させればさせるほど、同社の紙離れを加速しかねない点だ。しかも全国の朝日新聞の販売店からは電子版に対する反発も強いため、電子版の顧客情報を販売店にも渡して両者で共有する、電子版購読料の一部を販売店へ還元する、など販売店の反発を和らげるための配慮をした。

これは裏を返せば、紙の部数がさらに減っても、販売店が収入面で困らないようにするための仕掛けでもある。「紙もデジタルも」が朝日の掲げる目標だが、紙の部数減少が続く中でデジタルシフトを加速し始めたと考えるほうが自然だろう。

(山田俊浩 =週刊東洋経済2011年1月15日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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