三菱商事の主力部門シンガポール移転のワケ

大手商社も「さらば日本」で空洞化に拍車?

ASEANシフトを誘導する、激烈な税制優遇合戦

一方、シンガポール側にも優良企業の誘致を急ぎたい理由があるのだ。

ミャンマーの南西海岸にあるダーウェイ港の開発である。実は、ダーウェイ港が完成すれば将来シンガポールの物流拠点としてのメリットはなくなるからだ。ベトナムの北部にあるハイフォンからミャンマーへの東西回廊が完成し、中国雲南省からヤンゴン、ダーウェイ、バンコクの南北回廊も開発中である。

もし、これが完成したら現在のマラッカ海峡のルートは大幅に短縮され、シンガポール港の比較優位性は相当程度なくなるだろう。この地政学的リスクを回避するために金融、投資、貿易、市場開拓、物流、観光などへのインセンティブを強化させているのだ。

水害からの復興を目指すタイの経済復興に加え、急激に発展するベトナム経済やマレーシア経済も海外からの誘致戦略に弾みがついてきた。ラオス、カンボジア、そして今12年度の最大の経済復興はミャンマーである。

これらの国家群は成長エンジンをフル稼働させ、海外からの投融資を呼び込むための税制優遇合戦に参戦してきている。

いずれにしても、世界の経済成長は中国が一段落して、今やASEAN地域に集中しつつある。日本企業にとっては中国の反日デモの影響や人件費の高騰からみても、ASEANに移転する流れは止めることはできないだろう。

世界の非鉄金属やレアメタルのコモディティー市場はグローバル化が進み、すでに世界最大の非鉄メジャーであるBHPビリトンもシンガポールに移転している。石油だけではなく、金属(たとえばLME、ロンドン金属取引所)の事務所も、シンガポールに置いている。

今回の三菱商事金属資源トレーディング部門の移転については、裏側では、シンガポール政庁の強い要請と総合商社の利害が一致した結果なのかと想像をたくましくしている。ASEANの金融およびコモディティーの中心であるシンガポール市場の今後の動向に注目していきたい。

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