前回は三菱商事の金属部門がシンガポールに進出する話題を取り上げたが、今回は個人事業主や富裕層が、シンガポールに進出したり、移住したりしている現象について取り上げたい。
とはいっても、シンガポールのことを知らないと「ほんまかいな」といぶかしく思う向きもいるだろうから、出来るだけ判りやすく解説してみた。
お年始回りで若いトレーダーやベンチャー経営者たちが、わが家に飲みに集まった。三菱商事の金属部門がシンガポールに移転する昨年末の記事を読んだ連中たちだ。お屠蘇気分で「シンガポールに移住したら本当に得するのかどうか」との議論になった。
シンガポールは国まるごとデューティフリーのようなもの
30代の彼らは、ベンチャー精神豊かで海外経験も豊富なIT関係者、ソーラー発電等の自然エネルギー、さらにはコモディティなどを扱う連中である。
彼らの立場からすると日本の社会保険料はいくら払っても、自分たちには応分の年金は戻ってこないから、「日本にいても馬鹿らしい」というのが、共通した持論である。
しかし、話をよく聞いてみると社会保険制度だけでなく、日本の税制の不備についても100%理解している。だから、「自分はもらえて当然」と考えている団塊の世代よりも、よほど冷静に考えている真面目な連中である。したがって私も、今回のテーマをあまり煽ることのないように客観的事実だけを説明することにした。
そこでまず、初めに日本とシンガポール両国の税制を比較してみた。シンガポールの法人税は最大17%(実効税率は10%以下)で、日本の法人税は40%超と世界一高い水準といってよい。接待交際費などは原則、経費計上が可能で、住居費についても経費計上できる。
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