一方、個人の所得税率では日本が最高約40%(プラス住民税10%で合計50%)に対し、シンガポールは最高20%(住民税はゼロ)だ。さらに、相続税・贈与税はなく、資産運用益に係るキャピタルゲインやインカムゲインに対する課税もゼロである。まあ、重税感に苦しんでいるわれわれからすると、「国中がデューティフリーショップ」のようだから、うらやましいかぎりだ。
何をやっても、この15年間のシンガポールはうまくやってきた。というのも2000年まではシンガポールの法人税はまだ26%であった。香港(16.5%)と比べても明らかに高かった。しかし、01年には25.5%、02年24.5%、03年22%、05年20%、07年18%、10年17%と、しだいに低く誘導していった。意外である。初めから優遇税制を餌にして企業誘致をアピールしてきたわけではなかったのだ。
これだけのメリットがあれば、法人も個人も考え込んでしまうというものだ。日本の政治や経済が停滞していることに加え、若い世代は失業問題や税金問題、そして年金問題に疑問を持っている。だから世界屈指のビジネスインフラや合理的な税制システムが整ったシンガポールへ引っ越ししようかな、と思うのは当然である。私だって、若いときなら、とっくに移住していたかもしれない。
現在、シンガポールの日本人は2万4000人ぐらいいるとされている。ちなみにシンガポール人口は現在約500万人程度で、外国人はそのうち約30%。日本人比率はたった、0.5%しかいないことになる(外人比率でもたった1.7%である)。
メーカーの出身者によると、シンガポールがモノづくりには適さないようになってマレーシアやインドネシアに転出する人も多い、という。だが、日本からシンガポールへの移住者はこれからが本番になりそうだ。
いまや、シンガポールは世界でも有数の先進的ソフトパワ―国家に成長した。積極的な外資の誘致努力で、経済成長が高く、ついに一人あたりのGDPでも07年には日本を追い抜いてしまった。主なデータは以下の通りである。
1) ビジネスのしやすさランキング世界1位(12年、世界銀行発表)
2) 貿易円滑化指数世界1位(11年、世界界経済フォーラム)
3) 今後、最重要な金融センターランク世界1位(11年、Z/Yen英国グループ)
4) 世界で最も住みやすい都市ランキング世界1位(12年、ECAインターナショナル)
5) 国際競争力レポート「政治への国民の信頼」世界1位(12年、世界経済フォーラム)
6) 国際競争力レポート1人当たり名目GDP(11年)アジア1位
(12年、シンガポール通商産業省)
いやはや、大したものである。
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