損益分岐点はおそらく年俸1億円以上か
さて、わが家に来た若手経営者たちの結論は以下のとおりとなった。
経営者として、確かにシンガポールに個人事業主として会社を移転させる価値はありそうだ。だが、金融や貿易取引などでASEANを攻める場合には意味があっても、節税のためだけに、シンガポールに会社ごと移転することはあまり意味がないのではないか、との結論だ。
結局は、大金持ちのための税制優遇であり、中小零細企業の社長がシンガポールに行っても大したことはない。そもそも、世の中にそんなうまい話があるわけはないし、長続きはしないとの結論である。
三菱商事のように、会社ごと移転する際に、サラリーマンとして現地に駐在するならば住民税が不要になるが所得税(14%)を払わされるならば、例えば600万円の給与所得者ではシンガポールの税制では約34万円(控除含まず)ほどだ。
一方、日本では所得税は20%で約35万円に住民税(10%)が約39万円として合計74万円である。これなら差額はたった40万円だから、600万円くらいの報酬をもらっている給与所得者にはコスト倒れで逆にリスクがあるだけでメリットは無い。
直観的には、1800万円以上の給与所得層は所得税が33%(プラス住民税10%)の所得層なら、税金の差額が日本の492万円に対してシンガポールなら約17%で約221万円(特別控除は含まず)となり、271万円の節税が可能となるから多少はメリットが出てくるが、これも経費倒れになるだろう。
なお、年俸1億円となると、この場合は日本の所得税が40%で約3452万円、住民税が933万円だから合計4385万円となる。一方シンガポールでは最高でも20%だから約1845万円である。その差額は2540万円となり、これならシンガポールに移住する経済合理性はありそうだ。
若手経営者たちの意見によると、国税の眼を盗んで節税をする暇があれば正々堂々と日本で税金を払ってベンチャー事業を推進する方が、話は早い。
ただし、企業規模が大きくなり、個人の年俸が1億円以上の実力になったときには、海外投資を積極的に推進して、日本国に利益送金を実行する方が国益に資するとの結論である。
いわば、損益分岐点は年俸で1億円以上ということだ。
大企業がこすからいことばかり考えているような世の中なのに、日本の若手経営者たちはしっかりした考え方をしているものだ、と正月から驚いた次第である。
今回も少々長かったかもしれないが、多少は皆さんの参考になっただろうか?
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