12月21日に三菱商事の金属資源トレーディング部門がシンガポールに本社を移転させるというニュースが飛び込んできた。総合商社の主力部門の一つがシンガポールへ移転するということだが、大手商社で、しかも主力部門の本社機能を海外移転するのは初めてだ。
これまでは、日本の「産業部門」が空洞化してきた、といわれて久しい。が、いよいよ「貿易部門」も日本から「おさらば」しだして、日本にはほとんど何も残らなくなるという見方もある。
三菱商事の金属グループは前2012年3月期の連結純利益(4538億円)の約4割程度を稼ぎ出した中核部門である。現在、鉄鉱石や原料炭を扱う鉄鋼原料本部と銅や貴金属などを担当する非鉄金属本部で構成するが、両本部ともに販売・貿易部門と鉱山投資部門を持っており、商品別の縦割り組織となっている。
日本国内の事業を引き継ぐのは「三菱商事ユニメタルズ」だが、13年4月以降は社名変更し、シンガポールに置く本社の日本支店として機能させる。現在は非鉄金属のみを扱っているが、4月からは鉄鉱石や鉄鋼原料など資源分野の国内取引も三菱商事から引き継ぐとしている。
シンガポールに移転する本当の目的は?
さて、三菱商事の主力部門の一つが海外移転する理由と言いわけはいくらでもある。実際、同社の公式見解は、アジアでの顧客対応力強化や新規顧客の開拓などだ。
だが、隠れた「本当の目的」は、一つには高すぎる法人税の節税にもあるのではなかろうか?日本の法人税の実効税率は約40%だが、シンガポールでは17%(条件が合えば5~10%)と大幅に低い。コスト面で有利になることも移転の動機になったと、私はにらんでいる。
今や商社のPure Trading(純粋なメタル取引)の手数料は低いだけでなく、非鉄金属の市況が暴落しているために、金属部門の経営はますます厳しくなっていることも理由の一つだ。
しばらく続いた資源ブームも終焉したため、仕方なくシンガポールに本社を移転して、節税も目的にしつつ、サバイバルを図る決定になったのではないか。
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