どこの企業も法人税を払いたくないといっているのではない。有効にして公平、かつ合理的な税金の使い方ができていれば、誰も文句は言わないはずだ。
だが日本の政治の混乱や行政の無為無策を見ていると、責任感の強い経営者なら身を割かれる思いで海外移転を考えざるをえないのだ。
誰が好んで住みにくい海外移転などをするものか。だが、従業員の雇用を守り、企業を生き残らせるためには仕方がないのだ。
もちろん、こうした批判をする場合、日本の法人税が大変複雑で、単純比較はできないことは承知している。大手企業には一般的に、優遇税制の利用があるからだ。たとえば、トヨタ自動車やホンダなどの大手自動車メーカーでは、試験研究費税額控除が5~10%はある。また、総合商社では外国税額控除や受取配当益金不参入の効果などで、実質的にはすでに20%以上の控除を受けていることもわかっている。
問題は中小企業だ。大企業に比べ、体力もないから税制優遇制度への手の打ちようがないことである。日本経済を支えているのは中小零細企業であることを政府は忘れてもらったら困る、といいたいのだ。
さて、目を日本企業から、「受け入れる」側のシンガポールに転じよう。同国は、これまでも貿易・海外事業拡張・観光促進企業向け優遇措置を次々に打ち出しているが、特に魅力的な施策はグローバル・トレーダー・プログラム(GTP: Global Trader Programme)である。
国際貿易に携わる会社で、シンガポールをオフショア貿易活動の拠点として位置づけ、経営管理、投資・市場開拓、財務管理、物流管理の機能を有する会社は、収益に対する法人税に5%または10%の軽減税率が適用されるのである。
日本にいたら40%の法人税が付加されるのが、シンガポールに移転すれば、条件次第で5%~10%の法人税で良いというのだからシンガポールへの移転を誰だって検討したくなるのは当然である。
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