成功する地方創生は「人づくり」が一味違う 「こうしなさい」では絶対にダメ!

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永井:そして松下さんがリーダーとなって、「日本一の星空ナイトツアー」を推進することになるのですね。他の人と松下さんは、どんなところが違っていましたか?

JTB中部の武田道仁さん

武田:「ウチも観光活性をしたい」という方は多かったんですが、名刺交換だけとか、1回打合せをするだけで終わるケースがほとんどでした。でも松下さんの行動力は異次元でした。まず名刺交換をしたらすぐ電話があり「いつ阿智村に来るんですか?」。

朝、名古屋から高速バスに乗り、阿智村に10時半に到着して、午後3時のバスで名古屋に帰るまで4〜5時間打ち合わせです。帰って数日後、また電話で「先日打ち合わせしたことを村の関係者に交渉したので、もう1回来てください」。次の週、また阿智村に行って……。その連続で、1〜2週間単位で動いていましたね。「ナイトツアーで、エンタテインメント性が欲しいですね」という話をしたら、翌週には「スタッフの衣装のデザインをしましたから見に来てください」という感じです。

永井:すごい行動力ですね。

武田:スピードは大切ですね。地域でありがちなのは、ワークショップのときは「あれいいよね。やろうぜ」となるんですけど、1カ月後の次のワークショップまで何もやらない。その繰り返しで、結局、進まないんですよね。本当は地域主導でどんどん進めていただきたいんですけどね。

永井:「自分が心からやりたいから動く」という人の方が、遙かに大きな成果を出しますよね。まさに阿智村の松下さんはそういう人だったわけですね。

武田:圧倒的にそれが違いますね。最初から、「自分ごと」で動かれていましたから。

新しいお客様が来る仕組み

永井:その松下さんは、何に困って、武田さんに相談したのでしょうか?

武田:阿智村は昼神温泉という温泉郷を中心に栄えた観光地です。でも今の時代、お客様は「温泉がある」だけでは来てくれません。そこで阿智村も本当に色々な試行錯誤をしてきました。

たとえば阿智村はかなり早い時期に旅行業免許を取得されて昼神温泉の宿泊者向けに地域を巡るバスツアーを実施していました。また、首都圏や中京圏も格安シャトルバスで結びました。確かお客様の満足度を上げる効果はあります。しかし「これがあるから、阿智村に来る」という目的になっていないので、新しい需要を生み出していませんでした。

そのほかにも、昼神温泉の色々な旅館のお風呂に入れる「湯めぐりパスポート」を作られていました。一見、数字の上では売れていたんですが、実際には地元の人が銭湯代わりに使っていたり、日帰りのスキーヤーが一風呂浴びて帰るのに使っていました。これも新しいお客様が来る仕組みにはなっていないんですよね。

永井:来たお客様は満足しているし、うまくいっているように見える。しかし実際にはどうしても行きたい場所になっているわけではなかった、ということですね。

武田:「行ってみたら、あった」じゃなくて、「それがあるから、行きたい」というようにしたいですよね。阿智村ではそれが「日本一の星空」でした。綺麗な星空は、阿智村の人たちにとって当たり前ですが、阿智村が集客したい都会の人にとって大きな価値がありました。「日本一の星空ナイトツアーがあるから、阿智村に行く」という理由になるわけです。さらに星が見えるのは夜ですから、日帰りではなく、昼神温泉にも泊まってもらえます。

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