成功する地方創生は「人づくり」が一味違う

「こうしなさい」では絶対にダメ!

永井:武田さんは阿智村の他に、色々な地域づくりに関わっていますよね。たとえば石川県白山市(はくさんし)も武田さんが支援している地域です。白山市と関わったきっかけは何だったんですか。

普通の街に脈々と受け継がれている歴史を観光資源に

武田:JTB金沢支店から私に、「1年後の北陸新幹線開業に向けて、金沢を訪れる観光客の方に、隣の白山市まで足を延ばしていただきたい。そのために地元支店としてお手伝いしたい」という相談がありました。そこで白山市の方々と何回かお話ししました。

白山市には本当に色々な地域資源があります。たとえば白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)という全国3000社ある白山神社(はくさんじんじゃ)の総本山があります。ここの社殿創建は2100年前の紀元前91年、第10代・崇神天皇の時代です。この白山比咩神社の神体山である白山(はくさん)に泰澄が登頂して開山したのが1300年前の奈良時代です。

マーケティング戦略アドバイザーの永井孝尚氏

永井:イエス・キリストが生まれたのが2000年前、ムハンマドが神の啓示を受けてイスラム教を始めたのが1300年前ですから、同じスケールの歴史が、普通の街に脈々と受け継がれている。考えてみるとすごいことですよね。

武田:白山市には他にも色々な地域資源があったのですが、あるとき地元の方と雑談をしていたら、「辻占」(つじうら)というお正月だけに食べる和菓子があって、地域の人は常識だというんです。和菓子の中におみくじが入っていて、3つセットで揃えると何とも不思議なメッセージになります。辻占には長い歴史があって、一説によると、この辻占が中国に渡って中国から日本の中華街に渡って、フォーチュンクッキーとして日本全国に広まったそうです。

永井:「一説」っていうのがポイントですね(笑)。

武田:でも地域の方々にとっては辻占はあまりにも身近で、誰も観光資源になるとは気づいていなかったんです。「それ面白いから、きっと観光資源になりますよ」と提案したくなるところです。しかしここで私が提案すると、ダメなんですよ。

永井:というのは?

武田:私が答えを言うと、地域の人たちにとって「自分のもの」にならないんです。だから「さっき〇〇さんから面白いお菓子あるって聞きましたけど、何でしたっけ……」というような感じで話をします。「ひょっとして辻占のことかなぁ」と言うと、「それ面白いですね。もっと話を聞かせてくださいよ」というように持っていくと、次第に地域の方々が自分たちで発掘したものってなっていきます。

観光は来訪者の反応を見ながら常に受け入れ側が改善を図っていかなければいけないので、地域の方が自分たちで発掘し、磨き上げた「自分のもの」にする必要があります。だから、私はそれを引き出す役に徹しています。

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