ヒット商品を真似して、必ず惨敗するワケ だから星空ツアーやルンバは独り勝ちする

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結果である「商品」を単にまねても、磨き込まれて結実したヒット商品を超えることはできない(写真:yoko1713/PIXTA)
モノやサービスで溢れた今、ヒットを生み出すのは容易ではありません。いったいどうしたらいいでしょうか?
『そうだ、星を売ろう』(KADOKAWA)で村おこしに成功した阿智村の舞台裏を描いた永井孝尚氏が、ヒットの作り方について紹介します。

 

南信州の静かな村・阿智村は、「日本一の星空ナイトツアー」で一躍有名になった。2015年、このナイトツアーには6万人もの観光客が押しかけた。しかし国内では星空が綺麗に見える場所は決して少なくない。星空で賑わう阿智村の成功を見て、「ウチの村の星空も綺麗だ。星空で地域活性化だ」とばかり、阿智村の成功パターンにあやかろうとする村もある。しかし現実には阿智村以外で「星空」で成功をおさめている村はほとんどない。その一方で2012年に星空ナイトツアーを始めた阿智村は「日本一の星空の村」というブランドを確立している。

地域づくりに限らず、ヒット商品を模倣して2匹目のドジョウを狙う企業は多い。しかしそのほとんどは失敗している。それには理由がある。阿智村が「日本一の星空ナイトツアー」にいかに取り組んだかを見てみよう。

阿智村の観光の中心は、昼神温泉だ。最盛期の1990年代、昼神温泉は中京圏からの温泉団体客を大量に集客し、年間宿泊数は50万人に迫っていた。しかし中京圏の温泉団体客が激減し、集客力は急速に衰退、年間宿泊数は35万人まで落ち込んだ。

その影響が直撃した阿智村は、新しい顧客の開拓、特に首都圏からの誘客が急務になった。そのためには、さらに魅力がある観光資源が必要だった。そこで阿智村が目を付けたのが、環境省が「日本一星空の観測に適した場所」と認定した「星空」だ。

ライバルはディズニーランド

実は星空が綺麗であることは、阿智村に住んでいる人たちにとって当たり前のことだった。しかし旅館の灯りが多い温泉郷では満天の星空は見えない。この「星空」が観光資源になり得ることがわかったきっかけがあった。

阿智村に「ヘブンスそのはら」というスキー場がある。麓駅からロープウェーで15分をかけて山頂駅にあるスキー場へ移動する。「阿智村ならではの売り物は何か」と探している観光担当者に、このヘブンスそのはらで働くある若いスタッフが、夏の夜中の当直でゴンドラに乗り、山頂のスキー場で見える満天の星空を楽しんでいる、という話が入ってきた。つまり、このスキー場に行けば阿智村ならではの「満天の星空」を見ることができる。これは阿智村が誘客したいと考えていた若者カップルにとって大きな魅力だったのだ。

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