ヒット商品を真似して、必ず惨敗するワケ だから星空ツアーやルンバは独り勝ちする
彼らはなかなか自宅でゆっくりできない。家の掃除のことで夫婦喧嘩をすることすらある。「帰宅したとき、きれいな床が迎えて欲しい」というのは切実な願いだ。そこでルンバは、この掃除の問題を解決したのだ。一時期、通勤時の交通広告を出していたのも、ターゲットである「大都市圏30代~40代共働き世帯」の目に触れるようにするためだ。
お客様が買う理由を創りあげる
ルンバの戦略を先の「お客様が買う理由」のフレームワークで整理すると、次のようになる。
しかし顧客はわがままで移り気だ。ではルンバはいかにトップの地位を守ってきたのか?
実はアイロボット社は、ルンバの最新機種を真っ先に日本市場に投入している。これはコリン・アングルCEOの「日本のお客様を幸せにすれば、世界中のお客様を幸せにできる」という考えによるものだ。アイロボット社は、世界一きれい好きでロボットに抵抗感がない顧客がいる日本市場に最新機種を投入し、最先端の消費者ニーズを把握し、解決策を作っているのだ。
かくいう筆者もルンバのユーザーだ。わが家のルンバは、3代目だ。初代は2010年購入。綺麗に部屋を掃除できるので驚いたことをよく憶えている。2代目は2014年購入。4〜5倍のゴミを取るようになった。「初代ルンバは何だったのか?」と思うくらいだ。音は小さくなり、加えて掃除中に埃が多い場所を見つけると念入りに何度も掃除する。初代は髪の毛などがすぐに絡まってしまい取るのに手間がかかったが、新型はゴムローラーになり保守も簡単になった。3代目は2016年購入。埃が多いじゅうたんを掃除する時の吸引力が10倍になった。さらにカメラで部屋の形状を認識することにより、効率よく掃除することで短時間で掃除が完了するようになり、壁にゴツゴツ当たらなくなった。加えてスマホできめ細かい設定もできるようになった。
トップの地位に安住しているとライバルにあっという間に追い越される。そこでルンバは継続的な機能強化を愚直に継続し、ターゲット顧客により高い価値を提供し続けているのだ。
このように考えると、ルンバが十数年間もの間、市場トップシェアを維持している理由がわかるだろう。重要なのは、「お客様が買う理由」を創りあげ、リアルな顧客で徹底的に検証し続けること。そしてターゲット顧客のニーズの変化に合わせて、自分たちの強みを磨き続けることだ。場合によっては新たな強みを獲得する。言い換えれば、強みを活かしたニーズのサキドリである。
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