亀田製菓に立ちはだかる中国市場の壁 台湾・康師傅との合弁事業を解消

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「亀田の柿の種」「ハッピーターン」「おばあちゃんのぽたぽた焼」――。新潟に本拠を置き、米菓業界でトップを走る亀田製菓が、中国戦略の見直しに踏み切った。

亀田製菓は12月20日、台湾系の食品大手・頂新グループに属する康師傅(カンシーフ)との中国における合弁事業を解消すると発表した。折半出資による合弁会社「天津亀田食品有限公司」(中国・天津市、以下「天津亀田」)の株式持ち分である50%をすべて康師傅側に譲渡した。

理由は販売の不振だ。亀田製菓は天津亀田のほか、中国に子会社「青島亀田食品有限公司」(以下、「青島亀田」)を持つ。青島亀田は日本向けの輸出が主体ながら、中国国内の日系スーパー、外資スーパー向けに販路を拡大しつつある。一方、2005年に資本金840万ドルで設立した天津亀田は、昨年から休眠状態で今期はほとんど売り上げが立っていない状況だったという。

天津亀田の合弁先である頂新グループは、中国大陸で強力な販売網を持つ食品大手。中国での販路拡大を狙い、頂新グループと提携をする日系食品メーカーは多い。アサヒビール、サンヨー食品、敷島製パンなどに加え、12年にもスナック大手のカルビー、食肉大手のプリマハムが次々と提携している。

台湾・旺旺集団が圧倒的なシェア

だが、天津亀田が事業を拡大できず合弁の解消に至ったのは、中国国内の米菓市場に入り込めなかったことが大きい。中国の米菓市場は同じく台湾系の旺旺集団がシェアの約8割を押さえており、小規模な小売店などでは後発商品が棚に入り込めない。

亀田製菓が米国で販売するコメクラッカー

亀田製菓は20年度までに現在僅少の海外売上高比率を30%にまで高めるとしている。中国については今後、青島亀田を拠点に侵攻する意向だが、海外展開における重点は米国にシフトしていきそうだ。

米国では三菱商事との合弁「TH FOODS」が好調。アレルギー対応したコメ原料のクラッカーが、米国人の健康志向を追い風に2ケタ成長を続けている。8月には第2工場が稼働し、増産体制も整った。

日本の米菓業界ではトップの亀田製菓だが、中国市場に立ちはだかる壁は厚い。

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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