酒は大人の教養である―その2.ウィスキー前編
前回、ウィスキーの歴史を溯ればアリストテレスに行きつく、とお話ししました。
ウィスキーは、大きくわけると、大麦麦芽(malt)だけを原料にするモルト・ウィスキーと、それ以外の原料(トウモロコシ、小麦、ライ麦など)でつくるグレーン(grain=穀類)にわかれます。
そして、モルト・ウィスキーとグレーン・ウィスキーを合わせて、飲みやすくかつ大量生産できるようにしたものがブレンデッド・ウィスキー。有名なシーバス・リーガルやジョニー・ウォーカーなどはすべてブレンデッド・ウィスキーです。
モルト・ウィスキー(主にスコットランドでつくられるウィスキー)には、そのモルトの個性を活かすため、前回図でお見せした、単式蒸留器ともよばれるポットスチルが使われ、一度に複数回の蒸留ができるパテントスチル(こちらは連続式蒸留器)は、グレーン・ウィスキー(カナディアン・ウィスキーなど)づくりに使われます。
そして、最近若い世代にも少しずつファンが増えているのは、モルト・ウィスキーの中でも、ひとつの蒸留所でつくられたものだけを瓶詰めした、シングル・モルトとよばれるタイプ。大麦麦芽と水だけでつくられる酒の味が、こうも蒸留所と作り手で違うのかということに興味をもつ人が増えるのは、酒文化の継承という点で、とてもいいことだと思います。
「スコッチ」をめぐる誤解。
ところで、年配の男性で、ウィスキーをおすすめすると、「何がある?スコッチ?」とおっしゃる方がたまにいらっしゃいます。そういう方が、若い部下を連れて、ごひいきのスナックなんかに行くと、もうたいへん。
実は、これ、国産ウィスキーの品質が、スコッチウィスキーに追いつけなかった頃の名残なんです。昭和40年代ごろまででしょうか、愛酒家の間では、スコットランドのウィスキーが格の高い酒とされていました。なので当時は、バーで「スコッチ」をオーダーするのがステイタスだったんですね。
ただ、今は「山崎」「響」といった、日本のウィスキーが、国際コンクールで金賞をとる時代です。
飲みに連れて行かれた先で、上司が「スコッチ」と口にしたら、たとえその後にどんなうんちくが続いても、(この人時間が止まってる)と、優しく笑って聞き流してあげてくださいね。
イラスト:青野 達人
(※次回は12月28日(金)掲載。テーマは、「女だって、ひとりバー」です。)
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