キャリアという"偶然"に必要なもの 効率的キャリアが一番弱い

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「具体的な目標」へ効率的にキャリアを構築する危険性

次に、特に若い層に顕著なのだが、将来のキャリアゴールを決めてかかろうとする傾向があることにも現実との歪みを感じる。「天職に出合いたい」「私を幸せにしてくれる仕事はどこにあるのか」と自分探しを続ける「青い鳥志向」「天職志向」も同じだ。

また、とにかく自分のあるべきキャリアを決めて、そこにいかに“効率的に"到達するかにエネルギーを注ぐ傾向も見られる。はたしてこれは実際に効率的なのだろうか。

これは多分に今の大学のキャリア教育の影響もあるだろう。大学では、社会で仕事をしたことがない学生に対して、「自分の内的な分析をして将来やりたい仕事を考えろ」「明確なキャリアゴールを描いてそこをめざせ」という教育がなされる。

しかし、社会に出て仕事をしたことがない人間に自分がどういう仕事が向いているかを決めろというのは無理がある。

以前この疑問を大学のキャリア教育を担うプロにぶつけてみたことがある。彼いわく「それはそうだが、企業で面接を受けた際、『あなたのキャリアゴールは何?』と問われて、答えられないと落とされてしまう。だから無理があるとわかっていても答えられるようにするのが、われわれの仕事だ」。

すなわち、大学のキャリア教育は、本来のキャリア教育から離れ、就活支援になってしまっているのだ。

確かに就活支援もキャリア教育の一部だが、それに偏ってしまっている弊害である。これではまるで、一度もデートをしたことがない若者に向かって、「将来どういう人と結婚したいかのスペックを全部先に出せ」「それにマッチするタイプ以外の人とは、付き合っても時間の無駄だからやめろ」と教育しているようなものだ。

「効率的なキャリア」というのは、何に対して効率的なのかといえば、「明確で具体的な目標」に対してだ。しかし、想定外の事態が起こる現代においては、そのゴールにたどり着けなくなったり、そのゴールそのものがなくなってしまう可能性も大きい。

もしそうなった場合、そのゴールをめざして最短距離で走ってきたキャリアは、無駄がない分、最も脆弱なキャリアになってしまう。

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