キャリアという"偶然"に必要なもの 効率的キャリアが一番弱い

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あれから十余年。今まさに予言どおりの時代になったと感じている。

そして、もう1つの変化が、「専門性の深化・細分化」だ。AIJによる年金資産消失事件は記憶に新しいが、この事件の背景にも専門性の軽視がある。年金は、その運用だけでも実に奥が深い。

にもかかわらず、多くの企業が一般的なビジネスの経験とマネジメント能力があるというだけで年金の運用担当者を選び、その結果、だまされていても気づかなかった。きちんとプロを雇って勉強していた企業は、こうした事態を避けられたはずだ。

これは典型的な例だが、今はビジネスのあらゆる分野で、「専門性の深化・細分化」が進んでいる。以前であれば、専門性は、ものづくり系の技術者に求められるものだった。

今では技術者にはさらなる専門性が求められる一方で、これまで専門性を問われることのなかった文科系の学生でも専門性を求められる分野が増えてきている。

このように「想定外変化」と「専門性の深化・細分化」が同時に進行しているのが現在の環境であるが、このことはキャリアを考える上で、何を意味するのか。

「想定外変化」に対応するためには、幅広い経験をして、あらゆる事態に対応できるジェネラリストを志向することが、キャリアとしては得策である。一方、「専門性の深化・細分化」が進むのであれば、スペシャリストとして自らの専門性を深掘りすることが望ましい。

では、この2つが同時進行で起こっている今、どういうキャリアをめざすべきなのか。

ジェネラリストでは「専門性の深化・細分化」という点で通用しない。しかしスペシャリストもまた、「想定外変化」に直面すれば、その専門性が役に立たなくなるリスクがある。

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