1人は関西方面の大学の教員の方、もう1人は東大の医学部の在学生だった。質問の内容はほぼ同じで、おおむね次の通りだ。
直感力・数値感覚が一般人と違う?
いやあ、これにはたまげた。細菌の体積をどう見積もるかにも左右されるが、確かに細かく分析し計算をすると、テーブルの上に置けるビンのような感覚とは程遠い大きさになる。東京ドームの体積が124万㎥(0.00124k㎥)、また体積ではないが、東京都23区の面積が621k㎡だから、1200 k㎥を超える空間はなかなかイメージできないほどの大きさだ。
この出来事を通じて私が感じたのは、常人では気づきにくい直感力というか、計数感覚のスゴさである。たいていの人は問題の前提を精査せずに鵜呑みにしてしまう。目に見えない、たかだか2μ㎥の細菌が、1秒間に1回、1分30秒程度分裂したところで、まさかこのような巨大な空間を形成するなど、一般人は想像もしないわけだ。
実は本問については、もうひと方、サラリーマン風の男性からコメントを頂戴した。内容は「こちらは多湖輝さんの『頭の体操』シリーズにヒントを得たのですか」というものであった。
この質問にも驚かされた。先に示したように、本問は何十年も前に知人から質問されたもので、私は多湖輝氏の話を知らなかったからである。
多湖氏の『頭の体操』は、累計販売部数1200万部を越える人気シリーズ。1巻の出版からは50年も経過しており入手困難なので、国立国会図書館に本書を探しに行った。すると確かに、第1巻の49ページに「問10」として、とてもよく似た問題があったのである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら