イーロン・マスク 「21世紀の自動車王」 テスラ・モーターズ創設者

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スペースXは、今年5月に国際宇宙ステーションへのドッキングに成功した宇宙船ドラゴンで、世界で広く知られるようになった。ロケット開発では何度も試行錯誤を重ねてここまで到達した。

今後十数年で、火星に人を送り込む

現在スペースXは、スペースシャトル計画に代わって、今後の宇宙船開発を担う民間企業として期待がかけられており、NASAだけでなくアメリカ国外の宇宙関連事業を請け負う可能性も出てきている。

民間の宇宙開発には、リチャード・ブランソンのヴァージン・ギャラクティックも含めた数社が参入しているが、一般人の宇宙旅行を謳う各社とスペースXとの違いは、マスクが人類の火星への移住計画に照準を合わせていることである。

一般人の宇宙旅行だけでも十分に現実離れしているが、マスクがさらにその先に狙いを定めているのは、地球温暖化や疫病によって危機にさらされる地球以外にも、人類は居住地を拡大する必要があると強く信じているからだ。スペースXでは、今後十数年以内に火星に人を送り込むことを目指している。

テスラ・モーターズは、一度は資金難に陥ったものの、今ではスポーツカーからセダン、そしてSUVなど多様なモデルを開発、製造する電気自動車メーカーへと発展を遂げている。だが、実はマスクの事業として安定し、今後ますます拡大するのはスペースXだろうと見られている。

コストの安い、再利用可能な宇宙船の開発という新しい民間産業を興したマスクの夢はまだまだ続く。現在は、超高速列車に代わる長距離移動手段のアイデアを練っているともいう。

マスクは、一般人の思いもつかない、ほとんど非現実にすら見える未来を見据えているが、彼が思い描く世界が現実に近づいた時、アメリカでは最先端のテクノロジーと未来的ビジョンを合体させた、新しいタイプの製造業が大きな花を開かせているに違いない。

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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