日本のアニメは"薄氷"の上にある 神山健治が描く「アニメ界の未来」(下)

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――セルルックのフル3DCGアニメを制作してみて、海外に外注しなくてもいけるという手ごたえを感じましたか?

可能性は見えてきたんですが、決して簡単ではない。これがきっかけでアニメ業界に若い人たちが次々と就職してくれるわけでもないでしょう。

アニメ業界は決して低賃金なわけではない

よくアニメ業界って賃金水準が低いんじゃないの? と言われますが、それは決して低いわけではなく、スキルが必要なだけなんです。かっこいい絵を描ける人は限られてしまいますし、そこまでいくためには、どうしても修行が必要となる。

そこにたどり着けばみんなちゃんとお金は稼げるんですけど、中には、何年やってもそこまでたどり着けない人だっている。するとどうしてもハードルが上がってしまって、一般の職業よりも賃金が安いというような錯覚をされてしまいがちです。

フル3DCGアニメなら、ソフトを動かす能力さえあれば一応制作には参加できます。そういう意味においては、今までの手描きに比べたら可能性は広がったと思いますし、一石を投じることはできたと思います。アニメ業界ってデジタル化したにもかかわらず、実は今までデジタル化の恩恵はあまり無かったんですよ。だから今回、海外のスタッフにそれほど頼らずにできたというのは大きいと思います。

――神山監督には、アニメ業界の未来はどう映っていますか?

ものすごく可能性が広がっていると同時に、薄氷の上にいるな、とも思います。そこには、たとえば政府がお金を出すことだけでは救えない何かがあって。やはりアニメ業界全体を豊かな産業にしていかないといけないと思うんです。おもしろい作品を作った人はお金がもらえるんだといった夢のある業界にしないと。お母さんが就職するのを心配しちゃうような世界ではそれもままならない。

幸いなことに、海外の人が日本のアニメを観るという土壌は出来ている。ただ海外で、ハリウッド映画のヒット作と同じぐらい人が入ったかというと、そこまではまだまだいっていない。あまり語られていないことですが、自国の放送枠を日本のアニメに渡さないとか、そういうことがかなり昔から起きている。日本の政府にはむしろそういうところの対策をお願いしたいんです。

(撮影:梅谷秀司)

009 RE:CYBORG
2012年10月27日(土)全国ロードショー
(C) 2012『009 RE:CYBORG』製作委員会
上映時間:103分
公式HP:http://www.ph9.jp/

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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