日本のアニメは"薄氷"の上にある 神山健治が描く「アニメ界の未来」(下)

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――今回のキャラクターデザインについて気を付けたことは?

欲を言えば石ノ森先生のキャラクターデザインそのものの方が良かったとは思います。しかし、9.11もあり、石ノ森先生が描いていた頃より世の中はシビアになっている。世の中に合わせたハードな物語を描こうとしたとき、丸みを帯びた石ノ森先生の絵を物語に合わせるのが難しくなった。

神山健治(かみやま・けんじ) 
映画監督
1966年生まれ。2002年の映画『ミニパト』で初監督。『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズで国内外に熱狂的なファンを獲得。その後もNHKのテレビシリーズ『精霊の守り人』(2007年)、『東のエデン』(2009年)などを発表している。

しかし、石ノ森先生の絵を見ると年々リアルになっていた。晩年の絵を見ると、背景の書き込みとかもものすごいリアルになっている。これは想像ですが、多分先生ももっとハードな物語を描こうと思ったとき、リアルな絵を追求したのかもしれません。

今回は3Dなので、空間があるわけです。奥行きが発生したときに、奥の方に歩かせるということ自体は漫画風なキャラクターでも技術的にはできます。ただしその場合は、周りにあるもの、背景、小道具などもデフォルメしないとダメ。

例えばドアノブに手をかけた時には、石ノ森先生が描くあの丸い手と同じサイズのドアノブを作らなければならなくなる。するとドアに対してドアノブがものすごく大きくなってしまう…。こういう細かいことをクリアしていかなければならない。

もちろん009ファンの方には思い入れがありますから「そうすればいいじゃないか」と言われると思います。ファンの人たちの気持ちをなるべく裏切らないように、そのバランスは心がけました。最近は、実写映画でも、漫画のキャラそっくりにメイクして演じるケースがある。ハリウッド映画で『009』を実写化したら、今回描いたキャラクターのような人がキャスティングされるかもしれない。そういうイメージで作品を作っている。

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