藤原:一方、石巻には、技術を持った優秀かつボランティア精神あふれる人たちが今も残っている。最初の頃は、都会生活に飽きちゃって、被災地に自分探しで行ったような女の子が多かったんですよ。そういう人たちはだいたい半年ぐらいで負けて帰ってくる。だから、今残っている奴こそが本物。
その中で私がビジネスパートナーとして一緒に活動しているのが、漁師の会社であるオーガッツの立花貴君。彼はもう住民票を石巻に移して漁師になっている。そのほかにも、石巻には、いろいろな活きのいい20代が結集している。
渡邉:昔はなかったですね、こういうのは。
藤原:向上心が横展開している。人に喜ばれることがうれしい、「ありがとう」と言われることを目指すという人が増えている。だから私は、活力が減っていることはないと思っているの。つまり、上に行く活力は減っているけれど、政府や行政に任せていたらできないようなことを、自分がやることで人の役に立つことが嬉しいという人たちが、ものすごく多様に増殖しているという感じがする。
第三の経済が生まれている
渡邉:こうした活動は、GDPにはカウントされませんよね。
藤原:されないと思うんだよね。たとえば立花君は、コンビニから買ってきたものを食べるのではなく、自分が漁師として獲ってきた魚を食べているわけで、それはGDPにはカウントされないよね。
だから私は、現在の経済でカウントされない第三の経済で、こうした循環が生まれているのは、ものすごくいいことだと思っているの。税所がバングラデシュでやっている事業もおカネを取っていないしね。
渡邉:そういう人たちは、50代になっても今の活動を続けているんでしょうか。
藤原:それはいい質問ですね。答えはわからない。
でも実際、そういう突出したことをやるのは、リーダーシップのある奴らなんですよ。そして、そうした人間にはフォロワーもいるわけです。フォロワーがその次のリーダーに育つのかはわからないけれど、新しいタイプの若者が、バングラデシュと石巻に結集している。そうしたモデルとなる人間が、100人、200人といて、1つのメッカになっている。
だから、30年後にどうなっているかと聞かれても困るんだけど、そういう活きのいい奴らが増殖していることは確か。これは統計には出てこないし、経済面の付加価値レベルという点では決して高くないかもしれない。でも、そういう奴らが増えるのはすごくいいことだと思っているの。だって、社会に役立ち、人に感謝されることを幸せと言わないで、何を幸せと言うの。
(撮影:梅谷秀司)
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