活きのいい奴らは、石巻とバングラに向かう

藤原和博(その2)

藤原:ただ、「向上心」というものの意味が、今と昔では変わってきている気がする。私たちにとっての「向上心」は、組織の中で上を狙いたいというような出世志向だった。会社で昇進すれば、給料が増えて、権力も高まる。銀座で飲めるようになるし、ホテルもスイートに泊まれるようになるし、女性にもモテるという、アグレッシブな、ちょっと“脂ぎった向上心”だった。

ところが、最近、私が感心している20代の若者は、今までとは違う向上心を持っている。今いちばんリーダーシップがあって、普通の会社で収まらないようなパワーのある奴がどこに行っていると思います?

答えは、バングラデシュと石巻なんですよ。バングラデシュの頭文字のBと、石巻の頭文字のIをとって、私はこの2つをIB(アイビー)リーグと呼んでるの。IVYリーグ(ハーバード、イェールなどアメリカの名門私立大学8校の総称)じゃないよ(笑)。IBリーグね。

バングラデシュを驚かした男

たとえば、バングラデシュにどういう奴がいるかというと、今いちばん応援しているのが、税所篤快(さいしょ・あつよし)という男。こいつは偏差値28だった足立区の落ちこぼれで、ご両親も非常に普通の人。要するに起業家の息子でも何でもない。それが東進ハイスクールのビデオ授業が自分に合っていたらしくて、早稲田に入ってしまうわけね。

でも、早稲田の授業を受けたところ、「これはなんぼのもんじゃ」と思って、本を読み始めた。そして、本に出てきたマイクロファイナンスで知られるグラミン銀行のムハマド・ユヌスにガーンと来るわけ。こいつが変わっているのは、英語がそんなにできもしないのに、いきなりバングラデシュに行ってしまうところ。最近、こういう奴が増えている。

渡邉:就職もせずに、大学時代から行ってしまったんですか?

藤原:そう、大学時代から。「いつまで休学してどうするか」という計画も立てずに。

そして、いきなりバングラデシュに行って何をしたかというと、グラミン銀行の本部でムハマド・ユヌスの車を待ち続けた。そしてある朝、ユヌスが乗る車が出てきたときに、車を引き留めて、「私は、あなたのそばで仕事がしたい」とあまり通じない英語でお願いした。同じことを、2~3日やり続けたところ、「しょうがないなあ」ということで、プロジェクトのメンバーに加えてもらえることになったのね。

そこで彼がやったのは、ダッカ大学に入るための予備校。ダッカ大学は、バングラデシュの東大なんだけど、バングラデシュの貧しい農村部の高校生は、そんなところには入れない。ダッカ大学には、半年かけて有名予備校に通って、名物講師の授業を受けないと入れない。

だから彼は、予備校の有名講師を口説き落として、30時間以上の講義を全部ビデオに撮らせてもらって、それをDVDにして農村部の高校生に見せた。そしたら、1年前に1人、去年は2人も合格者が出たので、バングラデシュは大騒ぎになった。こいつが今何をしているかというと、パレスチナに行って、難民の中で割を食っている女子高校生のために、同じことをやっている。

次ページ向上心が横展開している
キャリア・教育の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 若者のための経済学
  • 最新の週刊東洋経済
  • ボクらは「貧困強制社会」を生きている
  • はじまりの食卓
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
-

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
関西電力がはまり込んだ<br>「原発マネー」の底なし沼

社会を揺るがした関電首脳らの金品受領問題。本誌は関係者による内部告発文や関電の内部調査報告書などで、「持ちつ持たれつ」の関係に迫った。実態解明は第三者調査委員会に委ねられるが、原発推進への自傷行為となったのは間違いない。