次の世代のために”夢”を見せたい 知の「新世代リーダー」 東浩紀 思想家(上)
僕はリーダーというより道化
――大学教授の枠を越え、さまざまな仕事に取り組むのはなぜですか。
他の人がやらないからやっているだけです。他人がやってくれるなら、いつ何時でも降りたいな。
まじめに答えると、僕としては、自分のためというより10歳20歳若い次世代のためにやっているつもりです。というのも、若い人たちが、今萎縮しちゃっている。それは、上の世代が、面白いこと、奇想天外なこと、知的刺激のあることをやっていないから。
インテリのほとんどは、3.11の後何をやっているかというと、ブログやツイッターで闘っているふりをしているだけですね。あるいは、「まずは地元の復興が大切」とか、誰が聞いても正しいことを言うばかり。誰も、若者に"夢"を見せていない。
――東さんは若者に夢を見せたい、と。
3.11と比べられるのは敗戦ですが、あのときの若者は高度経済成長に夢を見たわけです。その夢は、自然に発生したのではなく、日本の未来はこうなるんだと、誰かが書いて提示したものです。そういうビジョンを描ける人がいないと、人は萎縮していくばかりになってしまう。
もっとも夢といっても、ある程度現実的な夢でないといけません。
多少は現実味がありつつ、知的刺激のある夢を見せてあげれば、今の学生が僕たちの世代になったとき、また面白いことをやってくれるはず。よい取り組みは、必ず連鎖します。今の日本では、まず足元を見ろ、まず手を動かせという人ばかりで同調圧力が強いから、僕のような人はバカなんじゃないかと言われる。だから、僕は、リーダーというよりは道化ですよ。でも、もうそれでいいかなと。
目の前の弱者を気にかけることだけが善ではないし、インテリの役割ではない。だから僕は、「弱者救済」という「絶対的に正しい言葉」にとどまらない大きな夢を考えていきたい。
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