次の世代のために”夢”を見せたい 知の「新世代リーダー」 東浩紀 思想家(上)

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東 浩紀
思想家・作家、ゲンロン代表
東 浩紀
1971年東京生まれ。哲学者・作家。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。東京工業大学世界文明センター特任教授。早稲田大学文化構想学部教授。2010年に合同会社コンテクチュアズ(現ゲンロン)を立ち上げ、編集長として『思想地図β』『genron etc.』などを発行。『存在論的、郵便的』(新潮社)でサントリー学芸賞、『クォンタム・ファミリーズ』(新潮社)で三島由紀夫賞を受賞。他の単著に『郵便的不安たち』(朝日新聞社)、『動物化するポストモダン』『ゲーム的リアリズムの誕生』(以上、講談社現代新書)、『一般意志2.0』(講談社)、共著に『自由を考える』『東京から考える』(以上、NHKブックス)、『父として考える』(生活人新書)などがある。
言論誌の休刊が相次ぎ、日本から思想家と呼ばれる人が消え、文壇の存在感がなくなり、大学は知のセンターから就職予備校に役割を変えつつある。そんな時代にあって、思想家の東浩紀は、所属する大学の外に出て、新しい言論メディア「思想地図β」や「genron etc.」を刊行。そのために、自ら出版社まで作った。
最近では、被災地福島の長期的復興の一環として、福島第一原発を観光地化する計画を推進、さらにイデオロギーの対立を超えた立場から「日本国憲法」の新案を起草した。それもこれも、「新しい国づくりは新しい思想を必要とする」との思いからだ。なぜ今、思想が必要なのか? 今後求められる、リーダーとはどんな人間なのか? 知の「新世代リーダー」に「日本2.0」のビジョンを聞いた。

僕はリーダーというより道化

――大学教授の枠を越え、さまざまな仕事に取り組むのはなぜですか。

他の人がやらないからやっているだけです。他人がやってくれるなら、いつ何時でも降りたいな。

まじめに答えると、僕としては、自分のためというより10歳20歳若い次世代のためにやっているつもりです。というのも、若い人たちが、今萎縮しちゃっている。それは、上の世代が、面白いこと、奇想天外なこと、知的刺激のあることをやっていないから。

インテリのほとんどは、3.11の後何をやっているかというと、ブログやツイッターで闘っているふりをしているだけですね。あるいは、「まずは地元の復興が大切」とか、誰が聞いても正しいことを言うばかり。誰も、若者に"夢"を見せていない。

――東さんは若者に夢を見せたい、と。

3.11と比べられるのは敗戦ですが、あのときの若者は高度経済成長に夢を見たわけです。その夢は、自然に発生したのではなく、日本の未来はこうなるんだと、誰かが書いて提示したものです。そういうビジョンを描ける人がいないと、人は萎縮していくばかりになってしまう。

もっとも夢といっても、ある程度現実的な夢でないといけません。

多少は現実味がありつつ、知的刺激のある夢を見せてあげれば、今の学生が僕たちの世代になったとき、また面白いことをやってくれるはず。よい取り組みは、必ず連鎖します。今の日本では、まず足元を見ろ、まず手を動かせという人ばかりで同調圧力が強いから、僕のような人はバカなんじゃないかと言われる。だから、僕は、リーダーというよりは道化ですよ。でも、もうそれでいいかなと。

目の前の弱者を気にかけることだけが善ではないし、インテリの役割ではない。だから僕は、「弱者救済」という「絶対的に正しい言葉」にとどまらない大きな夢を考えていきたい。

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