次の世代のために”夢”を見せたい 知の「新世代リーダー」 東浩紀 思想家(上)

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――「福島第一原発観光地化計画」のほかに、東さんが提示する"夢"のイメージとは?

日本は、今後人口が減っていきます。経済や人口動態を考えれば、さまざまな意味で国を外国人に開くべきなのは明らかだと思います。しかし現実には、日本人の国民感情は移民に対して極めて否定的。ただ、そこで突破口になるのが、観光産業かもしれません。その点でも、「福島第一原発観光地化計画」をやる意義は大きいと思います。

また、3.11があった以上、日本はやはりクリーンエネルギーに転換する必要がある。しかし、その実現の根底には、得だから損だからという計算だけではなく、「日本はこういう国だからクリーンエネルギーで生きていく」というような、新しい哲学や国家観がなければいけないと思います。

文系で先に行けない国は、理系も衰える

日本は明治維新で大きな成功を収めました。東アジアのどこよりも近代化は早かった。このアドバンスが、最近どんどん食い潰されてきている。でも、中国や韓国に追いつかれているのは経済で、文化や社会資本ではまだ先を行っています。それをもっと大切にすべきです。

たとえば、日本には以前から「言論の自由」がある。それは韓国や中国とは違う。必ずしも戦後の話だけではなく、そのベースには、戦前からの強い出版文化や西洋から学んだ思想などがある。漫画やアニメだって、そのうえで花開いてきたわけです。

日本は、そういった文化的先進性をもっと大事にするべきだと思う。文化でアジアをリードするといっても、「クールジャパン」がどうの、日本製DVDが何本売れたのという話では情けない。日本は、経済的繁栄の底にある思想や気風が優れているからこそ「アジアの知的センター」だったのであり、そしてこれからもそうあり続けなくてはいけないという話です。

中国で辛亥革命を起こした孫文は、日本に留学して、日本で思想を学びました。ところが、いまはそういう話をあまり聞きませんね。

そもそも、いま日本では文系は評判が悪いですね。批判する気持ちはわかりますが、でも、理工系が強いのも、そもそもは言論の自由や出版文化の強さがあり、そのうえの文化的多様性があったからだと思います。文系で先に進めない国は、結局理系も衰えると思います。

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