次の世代のために”夢”を見せたい 知の「新世代リーダー」 東浩紀 思想家(上)

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――「アジアの知的センター」とは、具体的にどのような役割なのでしょうか?

たとえばヨーロッパ。経済ではアメリカや中国に抜かれているかもしれませんが、いまでもすごく先進的な政策を実現します。たとえば同性婚。あるいはEUという超国家共同体。クリーンエネルギーもそうですね。こういう点について、他の地域はヨーロッパにはまだまだかないません。だから注目される。日本も、せめて東アジアの中ではそのような存在にならなくてはいけない。

アジアにはアジアなりの民主主義の形があるのかもしれない。それならば、議会のやり方や選挙のやり方など大胆に社会改革して、他のアジア諸国ではまねできないような新しい国の形を提案する。情報技術を生かして、こんなふうに行政と市民がつながるのかと、他のアジア諸国が驚くような国になる。そうすれば留学生も来る。いい連鎖が起きる。

日本はこれから、経済の力だけでは中国や韓国がなかなか追いつけないような、明治維新以降の長い近代の歴史があるからこそ可能になる、そのような先進的な社会デザインを実現することで生き残るしかない。そういう意味で、いま日本で、人文社会科学的思想はすごく必要とされていると思います。

――東さんは『日本2.0』の中で、「ぼくたちは新しい国をつくるため、新しい心、新しいマインドセットを必要としている」と書いています。

ええ。深刻な危機を迎え、改革を必要とするいまの日本の状況は明治初期の日本にも似ています。当時、福沢諭吉は次のような主旨のことを言っています。「国民一人ひとりは聡明なのに、集まると愚かな行動しか出てこない。この原因は『気風』にあり、維新の最大の障害はそこにある」と。

彼は、当時の日本が、新しい制度だけではなく、新しい国民のマインドを必要としていたことを、きちんと理解していました。この点について、いまの日本の課題は、福沢の時代とたいへん似ています。

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