次の世代のために”夢”を見せたい 知の「新世代リーダー」 東浩紀 思想家(上)

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――その「夢」の一つ、「福島第一原発観光地化計画」の着想の原点とは?

僕は今、うちの会社の会報『genron etc.』で「テーマパーク化する地球」というエッセーを書いています。このタイトルどおり、今は地球全体が観光地化している。東西冷戦が終わり、南北格差が縮まり、世界中の光景がグーグルマップで自由に見られるようになった現在、僕たちは、この惑星のどの土地に対しても、好奇心の赴くまま、軽薄で無責任な視線を向ける自由を手に入れている。

このような自由は、一般に政治や公共性の対極にあると思われています。しかし、世界を覆うこの欲望を、連帯の基盤に変えることができないか、公共の可能性に変えられないか。思想的には、そんなところが計画の背景ですね。

ただそれ以前に、福島第一原発同様、26年前に原発事故を起こしたチェルノブイリは今は観光地化しているんですね。それは事実です。だとすれば、福島も将来、絶対に観光客が来るようになる。これは脱原発とか原発推進とかとは関係のない事実です。だとすれば、そのとき、世界から集まる「軽薄」な観光客に、どのように今回の悲劇を伝えるのか。いまからきちんと考えていかなければいけません。

――しかし、反対意見も多いそうですね。

福島を観光地化するなんて不謹慎だという人が多い。ツイッターでも批判されています。実際、「震災記念公園」をつくる計画はあっても、原発事故を記録し後世に伝える施設をつくろうとは、国も県もまだ誰も言い出していません。しかし、それでいいのか。

原発事故は福島だけの問題ではない。日本、ひいては世界の問題です。日本政府は、この事件の詳細を、世界の市民のためきちんと記録する義務がある。広島がいま世界遺産になっているように、「フクシマ」は50年後、100年後でも記録されているはずの地名です。

突っ込みどころが多いことは、誰もやらない

ところが、今の日本の「正論」は、まずは地元の復興だ、被災民の気持ちだという。確かに復興は大事です。しかし、すべてをそのスケールで処理してしまい、福島第一の事故をなかったことにするのが、本当に正しいことなのか。

福島第一原発の悲劇をどのように後世に伝えるか。これは日本のこれからを占ううえで、いまの時点でそのケーススタディを重ねるのは重要なことだと思います。だから始めたのですが、実際にこの計画に対して行政や大学からおカネを引っ張ろうとしたら、すごく難しいでしょうね。みな尻込みするでしょう。日本は、そういう物事がすごく多い国。実は社会で求められていて、実際にやったら知的刺激も経済効果もあるのに、突っ込みどころが多いから誰もやらない。

というわけで、民間がやるしかない。だから、この計画はぼくが代表を務める会社が運営母体になっています。ウチの会社で勝手に人を集めて、勝手にスポンサーを募って、勝手に福島に行って、勝手にワークショップをやったりしている。

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