大災害後の「心の危機」は復興期に顕在化する

避難所トラブルも続出する「これから」の問題

実際この時期以降、避難所でのトラブルが目立ち始めます。たとえば、提供されるごはんやおかずの盛りが他人より少ないと揉めるようなことはしばしば。また、物や金銭の盗難が起きるなど、内部崩壊が始まります。

そんなときに「みんな大変なんだから、やめましょうよ」と言う人がいますが、これではますます「納得いかない気持ち」を残すことになります。物資の供給も必要ですが、行き場のない気持ちを受け止める役割を担う人も、これからの時期ますます必要になってくるのです。

私は東日本大震災の折、「震災こころの相談ダイヤル」を担当し、被災者やそれを取り巻く方々、そして援助に関わる方々のご相談を直接に受けていました。そんな中で、被災地で浮かび上がってくる問題の一つに、被災者の「2次被害」があると感じるようになりました。

2次被害とは、震災による1次被害だけではなく、それ以降の人との関わりによる心理的な被害のことを言います。たとえば、セクハラを受けて、相談しに行ったのに「あなたにも隙があったんじゃないですか?」と担当者に言われて、さらに傷つく。これもひとつの2次被害と言えます。

「頑張れ」の功罪

被災者の方々を何とか励ましたい、心の支えとなりたいと思う方はたくさんいらっしゃるはずです。そんな方が良かれと思って発した言葉も、かえって相手を傷つけてしまうことがあるのです。現地で声をかけるときに、以下の「NG発言」を必ず注意してください。

「みんな同じ。みんな大変。みんな頑張っている」

これらは、相手のことをその他大勢と同じととらえ、一人ひとりの気持ちに寄り添う表現とは程遠くなってしまいます。相手の状況や気持ちを一般化してしまわないことは、非常に大切です。

「まだ若いんだから。亡くなった人が悲しむ。辛いのは、あなただけじゃない」

これらは、発言している側の解釈を伝える表現です。労いのつもりでも、実際は心に届かない場合が多く、反発心を生みやすいといえます。

「頑張れ。負けるな」

「うつの人に頑張れと言ってはいけない」と聞いたことがある方も多いでしょう。それは、心身ともに疲弊し、とにかく頑張って頑張って、追い詰められてうつを発症してしまった人に、それ以上頑張れというのはあまりに酷だという理由からです。急性期(ことが起こってすぐの時期)に使うのは避けたいところです。

ただ、うつの場合も回復傾向がみられてくると、ちょっと背中を押す、励ます、という意味合いで、「頑張れ」を使うことがあります。そこから、本人が前向きに取り組み始めることも、少なくありません。ですから、頑張っている人に対する励ましは、状況や気持ちが少し落ち着いてからにしてください。安易な励ましを避けることが大切です。

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