大災害後の「心の危機」は復興期に顕在化する

避難所トラブルも続出する「これから」の問題

「我慢して。耐えなきゃダメ」

「○○しなさい」「○○してはダメ」という典型的な強制表現です。相手を追い詰めることになるので、善意からの言葉でも、絶対避けましょう。

「家があるだけまし。家族が無事なだけまし」

人の幸福感や不幸感は、人と比較することから生まれることが多くあります。不幸な状態と比較し、それよりも良い(まし)という考えは、自分自身を納得させるのに一定の効力があります。ただ、本人が発するなら別ですが、他者からは単なる押しつけ。悲しみの深さを理解しない発言です。

「仕方ない。どうしようもない」

突き放す表現です。相手の諦めと悲壮感をあおるような関わりです。

では、どう声掛けすればよいのでしょうか。心に寄り添う言葉かけが必要になります。相手の状況や、気持ちをそのまま受け止めていくことが大切なのです。

ポイントは「否定せず」「解釈せず」

以前も連載内で紹介しましたが、傾聴スキルに「繰り返し」という技法があります。相手が使った言葉を使って、伝え返すという手法です。この場合、実は言葉を言い換えるのは得策ではありません。微妙にニュアンスが違ってしまい、すれ違いが起こる可能性があるからです。「そのまま」を伝え返すことが必要です。

ただ、この繰り返しを間違えて使ってしまう方々もよく見受けます。

「昨日の余震、怖かったわ」「昨日の余震、怖かったのね」

「いつまで続くのか不安よ」「いつまで続くのか不安なのね」

こんなやり取りを繰り返したら、相手にバカにされていると思われても仕方ありません。繰り返しは、すべてを繰り返すことではなく、基本、単語で使います。「怖い」「不安」のようなワードを、「うん」や「そうね」のあいづちと、同じような感覚で使っていくのがスマートな方法です。

否定せず、解釈せず、良いことを言ってあげようと思わず、ただ、相手の気持ちに寄り添うことが大切です。どうにもならないことでも、聴いてもらえるだけで、救われることがあるのです。

しかし、繰り返しだけでは、会話は成立しません。この基本を心にとめ、あとは普通の日常会話をしましょう。特別に考えるからこそ、何も言えなくなることがあるかと思いますので、意識しすぎないことも重要です。

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