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東証が繰り出した「アクティビスト封じ」の波紋、「流通株式比率」を追い詰める作戦が不発に

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東京証券取引所
上場維持基準をめぐって、東証とアクティビストが攻防戦を繰り広げている(撮影:梅谷秀司)

「水面下で勝手に進められた、とんでもない話だ」

アクティビスト(モノ言う株主)であるストラテジックキャピタルの丸木強代表は憤る。矛先を向けているのは東京証券取引所だ。

火種は、東証が4月23日にホームページ上で公表した「流通株式」に関する見解だ。要約すると「外国の投資信託に組み入れられている株式は、流通株式とみなす」という内容。一見、何の変哲もない公表文に思えるが、実はアクティビストの「投資戦略」を封殺する威力を持つ。

この公表によって救われた上場企業がいる一方、狙い撃ちにされたアクティビストからは反発の声が上がる。

大阪製鉄の「弱点」

「上場維持基準の充足の確認についてのお知らせ」。

日本製鉄系の電炉メーカーである大阪製鉄が5月1日に示した発表文には、安堵感がにじんでいた。東証が公表した見解によって、上場廃止の瀬戸際から救われたからだ。

大阪製鉄の株式は、ストラテジックキャピタルが約12%を取得している。6月25日に控える株主総会では、配当方針の変更や日本製鉄との親子上場の解消を求める株主提案を行っている。会社側にとっては株主提案だけでも頭痛の種だが、さらに悩ましい問題があった。東証が定める上場維持基準の1つである、流通株式比率だ。

東証は、流通株式比率をプライム市場の企業で35%以上、スタンダード市場の企業で25%以上保つことを上場維持の条件としている。大阪製鉄の株式は親会社である日本製鉄が65%を保有しているが、国内の事業会社や10%以上を保有する主要株主の持ち分は流通株式として扱われないため、大阪製鉄の流通株式比率は低水準にとどまっていた。

実際、大阪製鉄は2022年に旧東証一部から新市場に移行する際、プライム市場が求める流通株式比率を満たせずスタンダード市場を選択した経緯がある。

ここにアクティビストが目を付けた。親子上場を問題視するストラテジックキャピタルが株式を買い進め、2025年2月には保有割合が10%に達し主要株主となった。これが大阪製鉄にとって深刻な事態を引き起こすこととなる。

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