(第4回)企業から見た「採用したい学生像」の変遷をたどる(就職氷河期編)

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 そこで、人事部はESをサイトからダウンロードさせて提出を義務付けることにした。読むための時間はお金のかからない必要経費だと割り切るしかない。時間・人・場所の調整だけでもひと苦労の1対1の面接は、GDに変更して一度に多数の学生を選別する。そして、現場の即戦力要請に応えるために、プロ志向の職種別採用にも取り組む。入社案内にも採用サイトにも、キャリアアップが必須のコンテンツとして盛り込まれるようになるのに大して時間はかからなかった。前回の連載で紹介した外資系企業A社の手法を各社がアレンジし、一斉に取り入れだしたのだ。

 ちなみに、A社の採用ターゲットは、偏差値レベルでは極めて高いゾーンの学生が中心であったが、男女の差はまったくなかった。なぜなら、ワールドワイドな事業展開を進めるため、性別・宗教・人種・国籍を完全にボーダレスにした採用戦略を作り上げる必要があったからである。

 あくまで私見だが、A社の採用戦略がプロトタイプとなり、各社が独自の創意工夫を採用戦略に盛り込んだとすれば、現在の男女公平に機会を提供する流れも、大学名不問の採用としながらも、何故か高偏差値の大学に実績がかたよることも当然の帰結だと思う。なぜなら、彼らは、優秀な人材が出現する確率が高い大学を統計的にポートフォリオ化し、日本の大学受験のシステムである偏差値を"相対的な尺度"として活用していたからである。

 男女は不問だが、偏差値ベースの基礎学力は問う。しかも、ESで文章作成・構成能力・行動特性をくまなく見る、GDでは学生のコミュニケーション能力をトレーニングされた面接官がつぶさに観察する。しかも、職種別採用なので、採用の最終的な決定権は各ディビジョンの専門家に委ねられる。このプロセスを踏んで内定を獲得した学生が優秀でないわけがない。

 就職氷河期においては、少なからず、この外資系企業のような採用手法を多くの会社が独自のやり方にアレンジしながら取り入れたはずだ。しかし、一方で大学のキャリアセンターや学生は、このようなスーパーマン採用ともいえるやり方に戸惑い、ついてこれなかった。

 このように見てみると、就職氷河期における「採用したい人材像」とは、公平ではあるが、決して平等だとはいえないシステムを潜り抜け、選考の現場で自分の能力を発揮した人といえるだろう。そして、多くの企業で「求める人材像」としてあげられる「コミュニケーション能力」とは、そういった学生に共通する人材の要素として、現在、多くの会社でコンピテンシー化された能力であると考えていいだろう。

八木政司(やぎ・まさし)
採用プロドットコム株式会社 企画制作部 シニアディレクター
1988年関西学院大経済学部卒。大手就職情報会社で営業、企画部門で主にメーカーの採用戦略をサポート。その後、全国の自治体の地域振興に関る各種施策や計画書の策定業務に携わり、2000年から再び企業の採用支援業務に取り組む。08年4月より現職。
採用プロドットコム株式会社 https://saiyopro.com/
佃 光博 HR総研ライター

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つくだ みつひろ / Mitsuhiro Tsukuda

編集プロダクション ビー・イー・シー代表取締役。HR総研(ProFuture)ライター。早稲田大学文学部卒。新聞社、出版社勤務を経て、1981年文化放送ブレーンに入社。技術系採用メディア「ELAN」創刊、編集長。1984年同社退社。 多くの採用ツール、ホームページ製作を手がけ、とくに理系メディアを得意とする。

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