マルキオンネはグループ内のマセラティに目をつけた。かつてない規模の投資を行い。マセラティを世界に通用する「量産」ラグジュアリーブランドとするというプランだ。彼はFCAのCEOであると共に、マセラティのプレジデント、そしてフェラーリの会長でもある。「フェラーリの『独立』は何を意味しているのか」(2月7日配信)で解説したが、マルキオンネはフェラーリを株式上場させ、FCAグループから分離させた。そして、この上場でFCAが得た資金がこのマセラティの拡大政策のための原資としても使われている。
マセラティは中規模のメーカーを目指している
マセラティは少量生産スーパーカーメーカーから、ポルシェのような中規模のメーカーを目指しているといえる。ただ、今までとはケタ違いの販売数量を目標とするにあたって、量産メーカーとどう差別化するかというジレンマも抱える。愛好家がニッチでレアな車を愛していた側面を無視するわけにはいかない。
マセラティにはフェラーリの株式上場で得たFCAグループの資金が投入され、グループ内における存在感をさらに強めていくことになるはずだ。フェラーリがFCAグループからスピンオフしたことにより、状況次第ではマセラティが、それまでグループ内でフェラーリの聖地であったミッドマウントエンジンの本格的なスーパーカーをラインナップすることもあり得る。一方でフェラーリもV6の廉価モデルを用意しているという噂もあるし、ランボルギーニもSUVマーケットへの参入を表明してもいる。モデナのスーパーカーメーカー全体も大きく変化している。
拡大路線を歩んできたポルシェは今や年間19万台規模まで到達している。そのために廉価モデル、4ドアモデル、SUVとカテゴリーを増やしてきたが、彼らが悩んでいるのはスポーツカーメーカーとしてのブランドイメージをどのように維持するかということだ。ポルシェ全体の中でSUVのカイエン・ファミリーが圧倒的な比率を占める現在、ブランドの核となる「911」シリーズの存在が霞んでしまいかねないのだ。
マセラティも今まではモデナ産の手作りモデルという希少性を売っていたメーカーである。それが主力車種の生産がフィアット所有のトリノ工場で大量生産となると、その希少性が薄まりかねない。マルキオンネは「年間75000台以上マセラティは作らない」と、拡大政策の途中にも関わらず、先手を打って希少性についてコメントしている。売れることはよいことだが、それによってブランドカラーが変わってしまう危険性をはらむ。これはマセラティの今後に向けた大きな課題であろう。
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