マセラティをよく見かけるようになった理由 このスーパーカーは明確に戦略を変えた

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モデナ本社工場

今年3月にはギブリのディーゼルエンジン搭載モデルが日本市場にも投入された。マセラティ流の存在感ある排気音を演出しているところなど、なかなか個性的なモデルではある。

少し前ならマセラティという伝説のレーシングカーを生み出した「エンジン屋」がディーゼルエンジンを載せるといったら、熱心な愛好家は暴動を起こしかねなかったかもしれない。時代は変わった。

拙著『フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ 伝説を生み出すブランディング』(KADOKAWA)で詳しく解説しているが、モデナというフェラーリ、マセラティ、ランボルギーニを生み出した「スーパーカーの聖地」ではもっぱら高付加価値の少量生産というビジネスモデルが歴史的に主流だった。フェラーリもランボルギーニも年間数千台しか販売せず、その売価をじわじわと上げて行く戦略だ。

対してマセラティは明確に舵を切った。まだ年間5000台程度しか売れていなかった2010年に年間5万台のメーカーへの変身を公約していたのだが、この目標をさらに上積みして2018年までには7万5000台を目指しているという。

マセラティは長い歴史の中において転換期にある

つまりマセラティはその長い歴史の中において転換期にある。イタリア・モデナのローカルメーカーであり続けるという、それまでの企業理念と決別し、世界の競合メーカーとシェアを競う存在を目指している。

ウェスターCEO(左)マルキオンネ(中央)

このような発想がモデナ土着の中小企業である彼らの中から出て来たのには理由がある。いつでもどこでも紺色のセーター姿で登場するセルジオ・マルキオンネの存在だ。

彼はFCA創始家の信任を得て、グループ内の自動車事業の立て直しに着手。クライスラーを飲み込み、瀕死のフィアットを復活させた。かつてのようなスモールカーを量産し利益を上げるメーカーとしてのフィアットから脱皮し、「Made in Italy」をアイコンとした高付加価値ブランドを主力商品とするメーカーへと変身することが彼の戦略だった。

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