(第3回)企業から見た「採用したい学生像」の変遷をたどる(バブル期編)

 しかし、一般の学生が何とかOB訪問をしようと電話をかけまくるのとは別に、悠々とOB訪問をこなす学生たちもいた。彼らこそ当時の「人事部が求める人材」であった体育会に所属する学生である。4年間スポーツをやり通したガッツと不条理をも受け入れるタテの関係で揉まれたタフさは、ほぼすべての企業で「求める人材像」として、高く評価をされていたのだ。

 当時は求める人材を「T型」という言い方で表現していた。Tの字の「ヨコ棒」はゼネラリストを、「タテ棒」はスペシャリストを表したのだ。つまり文系=ゼネラリスト、理系=スペシャリストというわけだ。
文系で入社すれば、まずは営業か販売の最前線へ配属し、個々に応じたキャリアアップは「4~5年経過してからだよ」というのがほとんどの企業の考え方であった。

 特に金融や商社をはじめとする非メーカーの場合、営業の現場で求められたのは突撃精神に近い根性論が罷り通っていた時代であったため、現場では当然のごとく、肉体的にも、精神的にも強靭なタフさが求められたのだ。

 また、当時はサークル活動やアルバイト活動を自己PRに転換することは「軟弱」と見られる向きも少なくなかった。したがって学生たちは「軟弱さ」のなかにも、「入社したら何でもやります」という元気さやガッツをアピールしたし、多くの企業もそれを受け入れていた。

 そして、そういうタイプの学生は一流といわれる企業から内定を貰っても、自分たちのことを「ソルジャー(兵隊)採用」だからと、特に卑下することなく言っていた。なぜなら、一方の幹部候補生の採用は、ある程度、名の通った企業であれば文系でも理系でも、優秀なゼミや研究室から教授の推薦ルートで一定数は採用していたからだ。学生たちは、このような大人の世界をOB訪問を通して知り、それを認識して就職活動をしていたのである。

 当時、就職情報会社の営業をしていた私は、20年近い時が経っても忘れることはできない言葉がある。それは、ある有名企業の人事課長が言った「一流大学の一流の学生は理屈っぽい人間が多い。一流大学の三流学生を採用したいんだよね」という言葉である。
 当時は一浪を「ひとなみ」と言っていた時代。難関大学の受験を突破しているため一定レベルの基礎学力は担保されている、後は体が動くかが採用する側にとって問題だったのである。

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