無視できない流行の発信源「パリピ」の生態 なぜ彼らがこれだけ影響力を持つのか?

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一方で、彼らの中にはアルバイトをしている子も多く、サークルなどを通じていろいろな学生との接点も多い。一般的な大学生からしてみても、メディアに取り上げられる機会の多いモデルの学生やミスコン出場者にはなかなか縁がないが、それに比べれば接点はまだ多く、繋がりやすい。「身近にいる憧れの存在」として認識もしやすいのではないだろうか。それが、彼らがトレンドリーダーとして多くの若者から彼らが支持される理由なのではないだろうか。

また、パリピの若者たちが興味を持つものには、ある特徴が存在することも見えてきた。それは、一般の若者はSNSで写真映えする活動を好むことも多いが、パリピの場合はそれだけではなく、さらに「+α」の要素があるものが多いと感じる。

たとえば、「健康的に見える」といった、普段の生活とのギャップを生み出せる要素や、「流行の最先端をいっている」といった自分のキャラを際立たせられる要素などである。普段からクラブやパーティーなどに足を運ぶ彼らにとっては、写真映えだけを狙ったものは「日常の一部」にしか過ぎず、SNSを通じて自分を演出する道具としては弱いようだ。

よって、一般の学生ではコスト面などでも敷居が高いがインパクトのあるもの、たとえば「ハンモックヨガ」のように【写真映え×健康イメージ】の要素をアピールできるものであったり、「屋内スカイダイビング」のように【写真映え×アクティブさ】の要素をアピールできたりするものが、今後彼らに支持されるのではないかと予想される。

もし美術館などでクラブミュージックとともに楽しめるイベントなどがあれば、「アートにも興味がある」といったギャップをアピールできるなどバリエーションはさまざま考えられる。こうしたものは今後パリピの若者たちに受け入れられる可能性は高いのではないかと考えられる。

原田の総評:今後のマーケティングに必要な視点

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トレンドの火付け役「パリピ」の最新動向はいかがでしたでしょうか?

私が作った言葉「マイルドヤンキー」は、2014年のユーキャン新語・流行語大賞に選ばれるなど、おかげさまで話題となりました。このマイルドヤンキー論は、かつてのヤンキーと違い、地元志向が強くおとなしくなった彼らが、今後の日本の消費の中心となっていくだろう、というものでしたが、今回の「パリピ」は、その消費のボリュームゾーンである「マイルドヤンキー」にトレンドや情報を届ける『媒介者』としての役割を担っていると考えています。

企業が新しい商品やサービスの情報をたくさんまいたとしても、この媒介者であるパリピに情報は選別され、パリピに受け入れられたモノがそのほかの若者に届けられ、マイルドヤンキーにまでたどり着く……。こうした今時の情報流通を押さえていくことが多くの企業にとって必要な時代になってきています。

新しいトレンドリーダーであるパリピの生態の理解と彼らをつかむマーケティングは、今後ますます重要になっていくはずです。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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