会員が猛反発!太平洋クラブ再生案否決の舞台裏

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だが、退会せずに引き続き会員であり続ける会員は、受け取った配当金を会社に再預託する。何よりも望むのはプレー環境であって、配当金の多寡は関係ない。退会者が多数出るようなコースでは、安定的にプレーフィーを落としてくれる会員がいなくなるため当然再建は望めない。ゴルフ場運営会社では「再建のカギを握る“販売先”が債権者でもある」という点こそが、「債権者は仕入れ先か金融機関」という一般事業会社との最大の違いだ。

 したがって、スポンサー金額は高ければ高いほど債権者を幸福にする、という一般的な法則はゴルフ場再生には当てはまらない。むしろ高いスポンサー拠出金額は、投資回収のための大量集客とそれによるプレー環境の悪化を連想させる。アコーディアがどんなに大量集客はしないと約束しようが、すぐに反故にされかねない口約束、としか会員は受け止めない。だからこそ配当率7%が10%に上がったところで会員には相手にされない、と民事20部は判断したのである。

■優先されるべきはプロセスの透明性

一方、民事再生と異なり、会社更生には頭数勝負の規定はない。債権額だけの勝負になる。その分会員には不利なのだが、その代わり、担保権者に担保権の処分の自由はないし、担保権の評価も厳格になる。

10月3日の債権者集会では、頭数では6866票(65.4%)対3634票(34.6%)で反対多数、債権額では57%対43%で賛成多数という結果が出ている。

預託金会員1万3600人分の預託金総額が約680億円であるのに対し、GKは形式上568億円の債権を持っており、担保で回収できない分を、民事再生手続の対象の債権として届け出ている。今回、裁判所がこのうちいくらを民事再生手続の対象債権額として認めたのかは公表されていないが、出ている数字から大ざっぱに計算すると、ざっと330億円くらいは認めた可能性がある。だが、更生担保権評価の結果、一般更生債権扱いになる金額がこれに近い金額になるかどうかは、まったくわからない。

現在、会員組織である「新・太平洋クラブを創る会(“太平洋クラブ会員の権利を守る会”改め)」は4~5社のスポンサー候補と接触しており、10月中旬くらいをメドに1社に絞って管財人(保全管理人)に推薦するという。

管財人が「創る会」の推薦するスポンサー以外にもスポンサー候補を募る可能性はあり、そうなればかねてから「スポンサー選定のプロセスが透明になれば手を挙げる可能性はある」としてきたPGMが参戦してくることもありうる。

今回あえなくスポンサーになり損ね、「まったくニュートラルに、ステークホルダーの利害も考慮して一から検討し直す」としたアコーディアの株価は、民事再生廃止が決まった途端、急回復した。

太平洋クラブのケースは、迅速な解決手段として多用されてきた「プレパッケージ型」破綻処理の限界が露呈した好例といえる。どこがスポンサーの座を手中に収めるにせよ、何よりも優先されるべきは、選定プロセスの透明性だろう。

(金融ジャーナリスト・伊藤 歩 =東洋経済オンライン)

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