会員が猛反発!太平洋クラブ再生案否決の舞台裏

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GKが本気で書面投票を白紙に戻せると踏んでいたのか、あるいは最大限抵抗したぞという姿を投資家に見せるためのアリバイ作りのつもりでしかなかったのかは不明だが、少なくとも計画案を若干修正して、もう一度集会を開催する機会を得ようとしていたことは間違いない。

10月3日の集会で会社案が否決された場合、もう一度集会開催を求める、いわゆる集会続行を申し立てる権利が会社にはある。続行申し立てには債権者集会が開催されていなければならず、書面投票のままでは続行申し立ては法の規定上不可能だ。債権者集会のやり直しとなったら、その意味を理解できない会員や投票意欲を失う会員が出る可能性は十分にあり、会員が投じる反対票が激減するおそれも出てくる。

会員組織の1つ「太平洋クラブ会員の権利を守る会」の世話人を務める西村國彦弁護士(上写真の左側、10月3日の「守る会」記者会見で撮影)は、GK側のこの意図に気づき、急きょ内々に有志を募って9月28日、東京地裁民事8部に会社更生法適用を申請。民事再生続行を封じ込める手段に打って出た。 会社更生手続を管轄する民事8部は、民事再生手続を管轄する民事20部に対し、再生手続の中止命令を出すことができるからだ。

実際、太平洋クラブ側は債権者集会で否決が判明すると、配当率を7%から10%に引き上げる修正案をもって、続行の申し立てを行っている。

■高い配当率を歓迎しない特殊性

ところで、民事20部は民事8部からの中止命令を受けるまでもなく、もう一度修正案で債権者集会を開催しても賛成を得られる見込みはないとして、会社側からの続行申し立てを棄却している。なぜか。ゴルフ場再生は、一般事業会社の再生と異なり、配当率が高ければ債権者の賛同を得られやすいというわけではないからだ。

ゴルフ場運営会社の債権者は、頭数では預託金返還請求権付き債権を持つ会員が圧倒的多数を占める。これ以外に多額の金融債務があると、ごく少数の頭数の債権者が大口債権者ということになる。民事再生では、再生計画案に認可決定を得るために、頭数と金額の双方で過半数を獲得しなければならない。

太平洋クラブの会員総数は2万人だが、このうち預託金返還請求権が付いていないプレー会員が約6500人程度いるため、民事再生手続の対象になるのは預託金返還請求権が付いた会員権を持つ1万3600人。

今回、民事再生の計画案は会社側しか出しておらず、会員組織側は会社側の案を否決しさえすればよかったので、頭数の勝負であることは明らかだった。

会社側は、アコーディアを選んだ理由として、他の候補者に比べて圧倒的にスポンサー拠出金額が高かったことを挙げ、何度スポンサー選定をやり直しても、アコーディア以上の金額提示ができるスポンサーは出てこないことを強調し続けてきた。

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