企業のアプリは不要?Facebookの強烈戦略 「メッセンジャー」が、すべての窓口になる

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では、削除をした結果として残るアプリは何なのか。スマホに残し続けるアプリは、メッセンジャーなどのコミュニケーションツールだという。フェイスブックはこうした新興市場を分析した結果、メッセンジャーをビジネスの窓口として機能させる道を選択したというわけだ。

フェイスブックが新興国から得た着眼点は、米国や日本などの先進国でも受け入れられるかもしれない。日々、アプリに埋もれながら暮らしているわれわれにとっても、画面いっぱいに散らばっているアプリの取り扱いは面倒なものになりつつある。もし、4つの航空会社、3つのコーヒーチェーン、2つのタクシーアプリ、4つのアパレルECサイトのアプリが、メッセンジャーアプリ1つで済むようになったら、スマホのホーム画面はいかにスッキリするだろうか。

つまり、フェイスブックがやろうとしているのは、そういうことだ。

個別企業のアプリは不要になる?

企業にとってのメリットも大きい。わざわざアプリを入れてもらってアカウントを作ってもらい、そしてそれを継続的に使用してもらうためには膨大なコストが掛かる。それよりも、フェイスブックメッセンジャーで話しかけてもらうコストのほうが低いことに気づくケースも多いだろう。

企業がメッセンジャーで行っているサービスをユーザーに知らせるためには、まずはフェイスブックページでプロモーションを行えばいい。また、簡単にメッセージアカウントを発見できる仕組みとして、メッセンジャーアプリ内での検索や、「m.me/〇〇」というURL、メッセンジャーで会話を始めることができる2次元コード「Messenger Code」も用意される。フェイスブックは本気で、メッセージ主体のスマホ活用をトレンドに変えようとしているのだ。

遅かれ早かれ、メッセンジャーによるサービスの提供は、重要なチャネルになるだろう。フェイスブック以外に有望なプレイヤーとして、日本のLINEの存在もある。

ただ、だからと言って、電話窓口をすぐに廃止したり、スマホアプリを取り下げる必要があるかというと、そうではない。顧客はより良い新しい方法よりも、慣れた方法に「使いやすさ」を感じるものだ。顧客が好む方法でのコンタクトを広く実現しなければ失うものも大きい。複数のチャネルを持ちつつ、それを効率的に運用できる体制を企業が持てるかどうか。これが今後のポイントになるだろう。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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