曇りでも人気!「日本一の星空ツアー」の秘密 長野県の小さな村が起こした奇跡

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盛り上げ方も進化していった

盛り上げ方も徐々に進化していった。照明の使い方もそのひとつだ。真夜中の山頂は真っ暗で危険だ。足元も見えない。そこで1年目は、星空を見る前に夜空をライトアップして足元を明るくし、鑑賞を始める段階で合図とともにいきなり照明を落としていた。この仕組みを2年目に変えた。いきなり照明を落とすのではなく、カウントダウンをして「ゼロ」のかけ声とともに照明を落とすようにしたのだ。参加者の期待を徐々に高めていく仕組みだ。こうしたカウントダウンをするようになってからは、歓声がより大きく上がるようになった。中には感動して泣き出してしまう女性も出るようになったという。

快適さにも気を配るようになった。星空ナイトツアーでは麓からロープウェイで15分かけて標高差600mを登り、標高1400mの山頂で星を鑑賞するので、夏でも肌寒い。しかし地上と山頂の温度差をそこまでと思わず、半袖で気軽に来るお客さんも多かった。そうなると満天の星空にも関らず、凍えて星空鑑賞どころではない。そこでそんなお客さんには、スキーウエアのレンタルを行うことにした。

「その失敗を翌日には引きずらない」

当初から試行錯誤と失敗の連続だった。しかし、谷澤さんを中心とした阿智村のスターガイドたちは、ある“仕組み”を作っていた。「その失敗を翌日には引きずらない」という方針だ。スターガイドたちは終了後毎晩、必ず反省会を行うのだ。

「何がよかったか?」「どんな問題があったのか?」「どのような対策を行うのか?」

これを必ず話し合うのだ。世界初の試みなので、手本も正解もない。だから現場で体験して、自分たちで問題を見つけ出し、解決策を探り出すしかない。さらにお互いに情報交換し、学びを共有していく。当初マニュアルを作成したが、改訂に改訂の繰り返しで現時点ではオリジナル部分は残っていない。

阿智村のスターガイドたちは、実に理にかなった方法で学びを蓄積している。ティム・ハーフォードが著書「アダプト思考」で提唱した、「失敗から学ぶ3ステップ」を実践しているのだ。

阿智村のスターガイドたちの挑戦を整理すると、この3ステップを着実に実践していることがわかる。

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