曇りでも人気!「日本一の星空ツアー」の秘密 長野県の小さな村が起こした奇跡

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この曇りの日も標高1400mの山頂に数百人が集まっている。そして皆、芝生に寝転がって楽しんでいる。星が見えないにも関わらず、なぜ観光客は楽しんでいるのか?

カギを握るスターガイド

その秘密のカギを握るのが、スターガイドだ。この星空ナイトツアーのコンセプトは天体観測ではない。「星空エンターテインメント」だ。想定するターゲット顧客は、天体観測マニアではなく、「身近な旅行でワクワク・ドキドキする体験をしたい」という20代の若者カップル。だから星の詳しい説明は不要。彼らは満天の星空を楽しみたいのだ。

そこで、観光客にワクワクする星の物語を語る、語り部としてスターガイドが生まれた。参加者に満天の星空をより楽しんでもらうことが仕事だ。しかし、阿智村にもともとそのような人材がいたわけではない。村の中でスターガイドを募集したが、実は全員が星に詳しいわけではない、素人からの出発だったのだ。

素人から出発したツアーガイドたち

阿智村で星空ガイドの採用・育成責任者として任命された谷澤信さんは、阿智村にあるスキー場「ヘブンスそのはら」に勤める20代の若い担当者だった。谷澤さんは、「日本一の星空ナイトツアー」を始めるにあたって、まずは阿智村の住民を対象にスターガイドの募集と採用を行うところから始めた。

しかし今でこそ全国区の知名度を得た「日本一の星空ナイトツアー」だが、この取り組みを始めた2012年は誰も知らない。3名の募集枠に対して、実際に応募したのは3名だけ。結局、全員採用せざるをえなかった。しかし3人とも、人前で話した経験もなければ、星の知識もない。しかも「スターガイド」は世界初の試みであり、手本もない。

もし皆さんが谷澤さんと同じ立場でこの仕事を任されたら、どうするだろうか? 何も手本がないのだから自分たちで、経験から学ぶしかない。

次ページ初陣では星が見えすぎて……
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