福井信英
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ(オットー・フォン・ビスマルク)」
振り返って見ると、自分の人生を決定づけた言葉を誰しも一つや二つ、持っているのではないだろうか。
大学時代には様々なことを学んだつもりだったけれど、振り返ってみると僕自身のキャリア形成に最も影響を与えたのは、何のことはない初めて参加した就職ガイダンスで聞いた言葉だ。
講義してくださったのはかなり年配の方だったことだけは思い出せるが、それ以外はどんな人であったか、どういう会社の人だったか、まったく思い出せない。けれど、そこで聞いたほんの短いメッセージだけは、自分の心の中で何度も繰り返したからか、10年近くたった今でも鮮明に思い出せる。それはこのようなメッセージだった。
「戦後から1960年頃にかけて、東大のエリートたちはどこに就職していったか。法曹界に進む人や官僚になる人たちはもちろん多かったけれど、民間に進む人たちにとって、一番の人気就職先は炭鉱会社だったんです。当時、炭鉱は戦後復興の旗手として、大いに期待されていたビジネスだったんですね。
意気揚々と炭鉱会社に就職していった彼らはどうなったか。国のエネルギー政策の変更によって、1960年代から炭鉱は相次ぐ閉鎖を余儀なくされていくのだけど、彼らはその中で、出世することもできず、ビジネスも先細りで、転職が普通の時代でもなく、会社の中で力を発揮できないまま定年を迎えたんですよ。
皆さんが、もっとも輝いて働けるのは、30代から40代の時です。ですから、そのときに最も輝けるように、今、人気のある企業ではなくて、今後人気になる業界や企業を選び、就職しなさい」
というメッセージだった。まだ、就職活動を始めてもいなかったけれど、このメッセージにはガツンとやられた。
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