グローバル化は「1493年」から始まっていた

コロンブスの新大陸到達がもたらしたもの

コロンブス交換はあまりにも大きく世界を変え、地球史上例を見ない速度で均質化を進めたので、生物学者の中にはコロンブス交換以降の時代を「均質新世(Homogenocene)」と呼ぶものもいるほどだ。現代を生きるわたしたちは、世界各地で驚くほど同じものを食べ、同じ病気に苦しむようになったのである。

交換が呼び起こした出会いは多くのイノベーションを生み出し、人類の数は爆発的な増加をみせた。より多くの胃袋を満たすことを可能とした食物の伝搬は、コロンブス交換の大きな恩恵の一つである。

しかしながら、長年の隔絶を経た後の再会には喜びだけでなく、多くの悲劇も伴われていた。意図せぬ外来種の持ち込みは固有種の激減を、異なる場所で生まれ育った人々の接触は病原菌の爆発的感染を、そして多くの変化の複合的帰結として生態系の不可逆的変化を、コロンブス交換はもたらしたのである。

1550~1850年ごろの北半球の寒冷期も、コロンブス交換がその一因であったのではないかと、最近の研究で指摘されている。そのシナリオは以下の様なものだ。もともとアメリカ大陸先住民は森を焼き払うことで土地を切り開き、農地を確保していた。

そこへ、突然ヨーロッパから伝染病が持ち込まれ、先住民社会はズタズタに破壊された。先住民の減少は樹木の生い茂る森の再生を促し、空気中の二酸化炭素が減少することで気温の低下に繋がった可能性がある(現代の温暖化現象と反対の方向だ)。コロンブス交換の範囲は、地球規模にもなりうる。

銀の不足が、中国をコロンブス交換の世界へ

コロンブスを送り出したスペインをはじめ、15~16世紀のヨーロッパ諸国はどこもその当時地球で最も栄えていた中国を目指していた。ユーラシアを通って中国にいたるルートはイスラム圏に遮られていたため、新大陸と太平洋を超えることで、ようやくヨーロッパは絹や陶磁器などの憧れの製品を生み出す中国へたどり着いた。

ヨーロッパが中国のあらゆるものを欲しがったのとは裏腹に、中国にはヨーロッパから買いたいものなどなく、政治的な理由もあり民間貿易は禁止されていた。この規制に穴を空けることになるのは中国での銀の不足だ。現在のボリビアに位置する都市ポトシで採掘された銀が、中国をコロンブス交換の世界へ誘うのに大きな役割を果たした様子も、本書では丁寧に描かれている。

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