消費増税先送りと衆院解散の「タイミング」 野党共闘もからみ、早ければ4月に動く
「引き上げはまず、無理でしょう。安倍晋三首相も、菅義偉官房長官もそういう腹ではないか。あとは増税先送りをどのように政局に使うか。そこを考えているのでしょう」
ある財務次官経験者が、ため息混じりでこう語った。
2017年に予定されていた消費税率の8%から10%への引き上げが、先送りされる気配が強まってきた。政治スケジュールをおさらいしてみよう。
民主党の野田佳彦政権下の2012年、民主、自民、公明の3党は税と社会保障の抜本改革で合意。その中ではまず、消費税率を2014年4月に5%から8%に引き上げ、2015年10月に8%から10%に再び引き上げること、消費増税分は全額、社会保障の財源に充てることとなっていた。
しかし、2014年4月実施の消費増税は日本経済に重くのしかかり、景気の足を引っ張った。そのため2014年末、当時の安倍首相は、2015年10月に予定されていた10%への再増税を2017年4月まで先送りすることを決めた。そしてその判断を国民に問うために衆院の解散・総選挙に打って出た。「増税しない」ことを問うという奇妙な総選挙だったが、安倍自民党は圧勝。消費増税は延期された。
消費増税先送りへ安倍首相は布石を打ち始めた
2017年4月の再増税については「リーマンショック級の大きな出来事がない限り行う」と明言していた安倍首相だが、2016年が明けてからの株価急落などで、「増税再延期」の機運が出てきたのである。
安倍首相の発言にも変化が読み取れる。2月19日の衆院予算委員会では「消費税率引き上げで逆に経済がガクンと減速し、結果として税収が上がらない状況を作るのであれば、全く意味がない」と答弁。24日の衆院財務金融委員会では「世界経済の大幅な収縮が実際に起こっているか、専門的な見地の分析も踏まえ、その時の政治判断で決める」と述べている。
その後、首相は「リーマンショック級の出来事が起きない限り引き上げを実施する」という従来通りの発言も行っているが、経済情勢次第では先送りもあり得るという考え方をちらつかせることで、与野党や経済界の反応をうかがっているのだろう。首相が消費増税先送りに向けて布石を打ち始めたことは間違いない。財務省は予定通りの増税を期待しているが、「安倍首相や菅官房長官が先送りを決断すれば、抵抗は難しい」というあきらめの声も出始めている。
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